社会貢献の功績
川原 尚行
日本大使館の医務官としてスーダンに赴任していたが、多くの子どもがマラリアやコレラで亡くなるのを目の当たりにしながらスーダンの人々を診察することが許されないことに葛藤し、平成17年に外務省を辞め、スーダンで医療活動を始めた。活動の基盤となるスーダン初のNPO法人ロシナンテスを設立し、出身地の高校や大学のOBからの寄付や帰国した際の講演活動で活動資金を賄っている。医療活動の他、現地での学校建設にも取り組まれている。
このたびは社会貢献支援財団よりこのような賞を頂き、身に余る光栄だと思っております。
今回は私が代表する形でしたが、ロシナンテスのメンバー、そして応援してくださる方の全員で受賞したと思っております。
私は外務省に在籍し、在スーダン日本大使館の医務官として赴任しておりました。スーダンは、政治的な理由から日本からの援助が停止され、また医務官としての職務上の制限もあり、現地の人達への診療行為や、二国間の医療援助が不可能な状態でした。
しかし、スーダンで病める患者を何とかしたいという気持ちから、外務省を辞職する決意をしました。そして多くの方々からの支援を得て、05年よりスーダンで医療活動を開始しました。
翌年に、私の故郷である福岡県北九州市を本部とするNPO法人「ロシナンテス」を設立しました。この法人は、私の専門性をもとに、医療事業を中心に、水・衛生事業、学校・教育事業、スポーツ事業、交流事業、母子保健事業といった活動を行っています。
医療事業においては、無医村を中心とした巡回診療から始まり、スーダン東部の村に診療所を立ち上げ、そこにスーダン人の医療スタッフを配置して医療活動を行っています。また、劣悪な水環境の改善のために給水所の建設を行いました。そして、スーダンでは女子教育が重視されていないことから、女子小学校の建設支援を行い、より多くの女子に読み書きを習得するための勉強の機会を提供しています。JICAとの連携事業である母子保健事業においては、伝統的産婆さんにのみ頼ってきた出産を助産師との協力によるものに変えて行くことや、妊産婦検診や乳児検診、母親学級などを助産師とともに行っています。
上記のような事業を同一地域で行い、アフリカでの地域開発の一助となることを目指しています。
またスポーツ事業では、スーダンで一番人気のサッカーを通じての子供たちへの教育を目指して、少年サッカー教室を設立しました。さらに女子サッカーの普及にも努めています。
団体名の「ロシナンテス」とは、ドンキホーテにでてくる痩せ馬「ロシナンテ」を複数形にしたものです。自分も仲間もみんな痩せ馬の「ロシナンテ」であり、そんな痩せ馬でもたくさん集まればきっと大きな力になる、という思いに由来しております。
実際にスーダンで活動するスタッフの一人一人が、ロシナンテですし、日本で応援をしてくださる方々の一人一人もロシナンテです。
この受賞を機に、スーダンや日本にいるロシナンテとともに、さらに精進してまいりたいと思います。
(活動写真:内藤 順司氏)