一般社団法人 コンパスナビ
様々な事情により、実の親に代わって社会で養育(社会的養護)された若者支援の活動を、さいたま市を拠点に行う法人。合宿免許のエージェントの株式会社インター・アート・コミッティーズの企業CSR活動から発展、独立した事業。児童養護施設等を巣立つ児童の「施設にいる間にアルバイトで貯めた資金は巣立ち後の住居の準備や、当面の生活費に充てねばならないため、職業選択の幅を広げ、実親を頼れない自分たちにとって強力な身分証明書になり得る運転免許の取得に約30万円を充てることができない」という声をきっかけに、2014年に施設等を巣立つ18歳29名に運転免許取得の全額助成を行った。翌2015年、社会に巣立つ若者が公平なスタートラインに立てるようにとの思いで一般社団法人青少年自助自立支援機構を設立し、運転免許取得助成制度を移管、埼玉県以外の施設等を巣立つ者にも給付型の助成を開始。2018年からは埼玉県「児童養護施設退所者等アフターケア事業」を受託し、施設入所中の児童に向けた自立支援プログラムの実施、施設等を巣立つ児童や退所後に離職した若者の就労支援、住居支援、生活支援、同じ境遇の若者が集える居場所「クローバーハウス」を運営し、施設職員・養育里親の安心にも寄与している。困難に出会い道に迷った時のコンパス(方位磁石)でありたいと2021年「コンパスナビ」と改称した。
この度は社会貢献者表彰をいただき、心から感謝申し上げます。
当法人の活動は、(株)インタ・アート・コミッティーズという合宿型自動車運転免許の取次事業の中に淵源があります。若い人の申し込みの際に父母のローンでの決済を希望するケースが多いのですが、与信審査の際にローンが通らぬ親の世代の厳しい経済状況を目の当たりにし、この国の将来を担う若者支援を模索し始めました。そこでさまざまな事情により実の親を頼れぬ埼玉県内の児童養護施設等を巣立つ18歳に、身分証明書となり職業選択の幅を広げ、自信を持たせることができる自動車免許取得助成を決め、2014年29名の若者たちに運転免許をプレゼントする企業CSR活動として出発したものです。
2015年に一般社団法人青少年自助自立支援機構(改称しコンパスナビ)を設立し業務を移管、今日まで約300名の運転免許取得助成を行ってきました。活動を広げていく中、2016年10月、内閣府、日本財団等が推進する「子供の未来応援国民運動」における「平成28年度未来応援ネットワーク」の事業団体に採択いただきました。2018年度からは埼玉県より「児童養護施設退所者等に対するアフターケア事業」を受託し、就労支援を中心に、住居支援、自立支援、居場所事業(クローバーハウス)を行っております。とりわけ同じ背景を持つ若者たちが安心して集える居場所事業は、コロナ禍を通じて大きな心の拠り所となっており、週3日の開所日は賑わい、笑顔の下にある困りごとをぽつりぽつりと話す場にもなっています。
社会的養護とは、さまざまな理由により子どもを養育できない実親に代わり社会が養育するしくみのことで、多くは18歳で施設・養育里親のもとから社会に出ます。当法人は、つまずいた若者たちの再就職、行政窓口との連携、医療機関、妊娠葛藤、債務整理などの伴走をします。自己責任で片づけるにはあまりに過酷な経験を重ね、ソーシャルスキルの未熟さから困難な現実に直面する若者たちに生きる力を身につけさせる事業をしています。
今、児童福祉法改正を受け、年齢上限撤廃がいよいよ具体的な施策となる変革期にあって、「自立可能」の状態を見極める社会的養育者との連携の中で、アフターケアに携わる者として最善の動きをしていく責務を痛感しています。
子ども時代を奪われ、身体だけは大人になっても内面に深い傷を負った若者たちのこと、そうせざるを得なかった親のことを、自分事・しゃかいごとととらえる温かい世の中に一歩でも近づくようにと願いながら若者支援の事業を深化させてまいります。