北海道マルディコラ・ネパール教育基金
元高校の理科の教師だった阿部眞次さんが、1994年にネパールから私費留学生として日本の大学への進学を目指して来日したラム・ギリさんの受験勉強を手伝ったことをきっかけに、同国の子どもたちの厳しい就学状況を知り設立した教育基金。当初、ギリさんの故郷の同国中西部カスキ県マルディ川地区の小中学・高校生を支援した。一人当たりの年間の学費は教材費を含め4千円程。彼らはその学費が払えないほど困窮していたので、中退せずに通学できることを願い設立した。基金は札幌に本部を置き、村落開発委員などで組織する現地支部に実際の運用をゆだねた。活動開始から25年。これまでに支援した子どもは3千人近い。奨学金のみならず20年かけて約20校に図書室の整備と図書の贈呈、パソコン教室を作りパソコンの配備をしてきた。村の配電工事に協力し、識字教室のための集会所も作った。これまで15回以上現地を訪問し、その際に理科の実験道具を持参し、現地で授業を行ったこともある。暗記科目化していた理科教育に警鐘を与え、毎年理科実験器具を提供している。阿部さんの活動のきっかけを作ったギリさんは、室蘭工業大学大学院博士課程で工学博士の学位を取得し、三井物産戦略研究所に勤務の傍ら、ネパールの再生エネルギーの研究者として働いている。ギリさんは「現在マルディコラ地域では、経済的理由で通学できない子どもは殆どおらず、阿部さんや多くの日本人が地道に支援活動をしてくれたお陰だ」と述べている。
「ネパールの殆どの土地が高い山で占められているために、発展することが難しいのは当然ですが、教育の発展を勧めない限り、国の発展は望めません」
これはネパールの私費留学生だったラム・ギリさん(現在、室工大大学院工学博士号取得後、三井総合戦略研究所アジア担当研究員)の切なる要請で、1997年の6月に設立した、北海道マルディコラ・ネパール教育基金の設立趣意書の冒頭の文です。
趣旨に賛同してくださる会員一人一人の参加によって作られているNGOです。本基金の活動全体は、会員の皆様からの会費(年額3,000円)、団体からの寄付金によって行われております。
これまでの活動は、現地のネパールのカスキ地方、霊峰マチャプチャレの麓を流れるマルディ川流域の約20校の小・中・高校の子どもたちへの奨学金提供。すべての学校に図書室設置、毎年希望図書の贈呈、暗記科目化していた理科教育の改善を図り、毎年基礎的理科実験セットを提供しています。マルディ川流域の村落の配電工事費援助や識字教室のための集会場の設置にも協力してきました。こうした支援活動は、子どもたちの学習意欲の向上、教員の指導力の向上、村民の識字率の向上につながり、カスキ県教育委員会から感謝状が現地カウンターパートに贈られました。
年々会員数の減少が続いてきたところに思いがけなく戴いた社会貢献支援財団からの表彰の報に、一番感激しているのは27年間会費を送り続けて活動を支えてきた会員の皆様です。贈られた副賞で、要望の多いPCをいくつかの学校に寄贈するつもりです。
ありがとうございました。