コペルニク
中村 俊裕
2010年に元国連職員の中村俊裕さんとエヴァ・ヴォイコフスカさんが発展途上国の貧困削減を目的に設立。インドネシアのバリ島に本部を置く団体。これまで27か国において、革新的な技術やサービスを活用して、エネルギー、水・保健衛生、農業・漁業、零細企業支援などの分野で、途上国の社会・環境問題の解決を目指して活動している。現在、「飲料水の浄化」「農業用ソーラー乾燥機導入」「再利用可能な生理用品普及」「女性零細起業家の生計向上」などのプロジェクトを行っている。実施にあたり、高いプロ意識とコスト、時間、資源の効率性、チームワークを重視した綿密なモニタリングを行うと同時に、世界中の企業や公的機関との連携を行っている。その他、インドネシアの自然災害時には緊急支援として、貯水タンクやシェルター、衛生キット、浄水器、仮設トイレ等、現地のニーズに沿った物資を提供する。貧困や環境保全にテクノロジーを用いて解決方法を模索し、さらにビジネスヘと発展させ、雇用を促進させている。
途上国への支援は様々な形で行われていますが、いわゆるODA (Official Development Assistance - 政府開発援助)が伝統的に最も目立ったものです。このODAを通じた途上国支援は、例えばJICAなどの2国間支援機関や、国連機関のような多国間支援機関から提供されることが多くあります。これらのODAを通じた途上国支援を取り巻く環境は、近年大きく変化しています。
一つにはODA活動に対して、そもそも途上国の持続可能な開発というインパクトがどれほど出ているのか、を検証しなおそうという流れがあります。RCT (ランダム化比較試験)という方法を使い、1000を超える途上国プロジェクトのインパクト評価を行った、J-PAL(ジャミール貧困対策ラボ)の経済学者らは、2019年にノーベル経済学賞をとりました。2つ目は、税金を使ったODA以外のお金の流れ、そしてそれに伴い政府系機関以外の援助団体が増えているということです。民間資金を財源とするのインパクト投資や、そこからの支援を受けたインパクトを重視するベンチャー企業などが増えています。2つ目との大きく関連する、3つ目の変化は、このように環境が変わる中、今までのやり方だけではだめで、常にイノベーションを起こし、途上国支援においても積極的に新たなアプローチを取り入れていくべきだという考えが支持されるようになってきています。
コペルニクは、このような環境の変化に乗り、途上国の課題を見つけて、解決策となりそうなソリューションに対して実証実験を行い、効果的なソリューションがより多くの途上国支援分野で採用されるように働きかけています。実証実験で、ソリューションがそもそも課題を解決しているのかを見極めることが出来るため、効果の出ないアプローチを除外することができるのです。さらに、実証実験から派生したベンチャー企業をスピンオフさせて効果を拡大させていくことも狙っており、これまででコペルニクの実証実験を経た社会的企業が2つ生まれています。
今回の受賞は、コペルニクの活動をさらに加速させていく上で、大きな励みとなるものです。推薦者の方々、財団の方々には心より感謝の意を申し上げます。