社会貢献の功績
特定非営利活動法人 時ノ寿の森クラブ
静岡県掛川市の小さな山村で育った松浦成夫さんは、故郷の里山の過疎化が進んで小川は涸れ、森林が荒廃して周囲の環境に悪影響を及ぼすのを憂いて、森林間伐作業を賛同者と共に2006年に開始し、2009年から植林作業も進め、翌年からはNPO法人として活動することになった。東日本大震災や紀伊半島大水害を契機に、「山から海までの市民が手をつなぎ、森林資源を生かした安心・安全なまちづくり」の必要性を痛感し、2012年に市民協働の「いのちを守る『希望の森づくり』プロジェクト」を開始した。19人で始まった活動は、現在は17法人を含む市内外の192人の会員を有するまでになり、間伐した面積は360haを超え、11万本に達する植林を行った。このように森づくりを通じて、都市と山村が支え合い、森と共生する循環型社会を目指して活動を続けている。
表彰式に臨み、人知れず、世のため、人のために尽力した人や団体を探し、社会に代わって称えるという本旨を知りました。帝国ホテル東京の式典は、格調、厳かさ、華やかさ、大きさ、それにも勝る社会貢献支援財団の皆様の心温まるお言葉、おもてなしの一つ一つは、感激の極みでした。そのような栄に浴させていただき、心から感謝申し上げます。
これまで長年にわたり、活動を支えて来てくださった多くの支援者の皆様に、厚く御礼申し上げます。全国津々浦々でもっともっと長く、地道に活動されて来られた方々とお会いし、心を新たにいたしました。この栄を支援者一同で喜び、また誇りとし、今後も陰ひなたなく「いのちを守る森づくり」を推進していくことを誓い、これまでの活動を振り返りつつ想いの一端を記し、感謝の気持ちとさせていただきます。
20年前、ふるさとの森を豊かな姿で未来の子どもたちに引き継ぐことを目指し、山間の小さな廃村集落跡で始めた妻との活動が、11年前から社会の個人や団体の御賛同をいただき、今日のNPO活動に発展することができました。森林は、防災や環境保全のほか人々の心身を癒し、昔から生命の源と言われてきましたが、いまや森林は社会から忘れられ、荒れ果てています。近年頻発する気候変動による自然災害、情報技術や人工知能があふれる中で顕在化する忌まわしい事件を見ると、森林や里山こそまさに現代の生命の源で、未来に残さなければいけない大切な社会的資産ではないかと思います。
人口の減少や高齢化、社会の仕組みの変化の中で、従来どおり土地所有者による森林里山利用は難しくなっています。これからは、広く社会の多様な主体が参加したナショナルトラスト方式により、森林里山の真の価値が活かされ、都市と山村が支え合う森と共生する循環型社会が実現してほしいと思います。時ノ寿の森クラブは、そのトップランナーとして自覚を新たにし、努力してまいります。かつて、廃村集落跡へ活動拠点の山小屋を立てる時、将来は子どもたちを集め、遊びも、食住も子どもたちの意志と力によって運営する「自称:山ザル学校」を開いてやりたいと密かに思っていましたが、今年「森のようちえん」をスタートしました。幼児期には、自然と触れ合う環境の中で、心や身体に不便や辛さを、痛みを、そして喜びや安心の感覚を記憶してほしいと願ってやみません。
特定非営利活動法人時ノ寿の森クラブ
理事長 松浦成夫