受賞者紹介

第60回 社会貢献者表彰
みぞぐち のぶゆき

溝口 伸之

(福岡県)
溝口 伸之

徐々に筋肉が衰える難病、脊髄性筋萎縮症。24時間介助が必要なこの病気に1歳の時、診断された溝口伸之さんは、難病患者を介護する家族の負担や大変さを経験し、30歳で障がい者の訪問介護や移動支援などを行う会社を福岡市に設立した。以降およそ20年にわたり活動するなかで、福岡市の「障がい者生活支援事業所連絡会」「民間障がい施設協議会」「障がい者差別をなくす会」「難病対策地域協議会」等、数多くの団体役員・役職として奔走、福祉行政に参画している。また障がい者1人1人の生活の課題を、事業所経営者と、当事者の視点で、問題提起や政策提言等を行う。国の福祉メニューにはない、施設へ移動すら難しい重度者のため、訪問型レスパイト事業を溝口さんが福岡市に提案すると、福岡市の独自施策として制度化された。のちに福岡県が市の制度をもとに、同じサービスを設けるなど大きく貢献した。さらに地域課題でもある、医療的ケアが必要な重度障がい者の受け皿不足を解消するため、医師や福祉関係者とともに「医行為の必要な障がい者の福祉型短期入所への受け入れ促進に関する提言書」を作成し、自らの法人で、医療的ケアが必要な重度障がい者に対応する施設を開所し、その実情や見通しを福祉行政や国に届けている。また、2014年度から日本筋ジストロフィー協会の福岡県支部長を務め、クルージング体験やバイオリンリサイタル、車いすで熱気球に乗るイベント等、独自の交流行事を実施し、支部会員の患者、家族のために尽力している。

推薦者:一般社団法人 日本筋ジストロフィー協会

障がいのある人にとって社会環境は近年大きく改善されましたが、それでもまだ多くの残された課題や新たに生じた課題にぶつかっています。障がい当事者であり、障がい者の在宅生活を支援する会社を経営している私としては、まさに終わりのない闘いです。全国には障がい福祉に日々尽力されている方が多くいらっしゃる中、第60回社会貢献者表彰の受賞にいささか恐縮しているところですが、これまでやってきたことが評価され、素直に喜んでいます。

生まれてすぐに脊髄性筋萎縮症と診断され、幼少期より車椅子生活でした。病気の仲間たちが若くして亡くなる姿をたくさん見てきました。一度きりの人生ならば納得のいく人生を送りたいと、病院を退院し地域の高校へ進学しましたが、母がガンで亡くなり、再び病院生活を余儀なくされました。私なりに描いていた夢や希望も打ち砕かれ、絶望感でいっぱいでしたが、ふと振り返ったときに支えてくれている人や見守ってくれている人の存在に気づき、自分は幸せだと感じたのです。

その恩返しに、これまでの経験を活かし、障がい者の在宅生活を支援する会社を30歳の時に設立しました。近年では全国的課題となっている医療的ケアの必要な重度障がい者の支援施設や訪問看護事業所等を立ち上げ、注力しています。日本筋ジストロフィー協会福岡県支部長や福岡市の業界団体、当事者団体等の役員・役職を数多く担い、障がい者の生活課題や社会環境の改善に取り組んでいます。福岡市の障がい福祉行政に参画する機会も頂き、その中で提案したことが福岡市や福岡県の独自施策として事業化されました。

20代の頃「なぜ病気の体、障がいのある体に生まれたのだろう」と考え込んだこともあります。答えの出なかった若い頃と違い、今ではこう答えます。「地域福祉を一歩二歩前進させること」「障がいがあっても安心して暮らせる地域社会にすること」これが私の使命だと考えています。もう手も足もほとんど動きません。しかし、これまでも想いだけでここまでやってきました。命ある限りこれからも一生懸命に生きて、少しでも社会貢献できればと思います。そして、人生の最期に「幸せだった」と言えるような人生となるように歩み続けます。

  • 福岡県難病患者担当と福岡県議会議員に要望活動
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  • 患者交流会(クルージング体験)
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  • 患者交流会(音楽鑑賞会)
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  • 患者交流会(熱気球体験)
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  • 会社主催の新春の集い(社内外に事業報告や方針説明、親睦を深める)
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  • 車椅子芸人トークイベント主催
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