一般社団法人 OCNet 大田区中国帰国者センター
戦争によって中国に置き去りにされた残留孤児と言われた戦争の犠牲者である人たちを支援してきた団体。1972年日中国交正常化後、在留邦人の帰国が本格化した1980年代。故鈴木昭彦さんが、大田区から委託を受け2009年に創設。永住帰国をした残留邦人の平均年齢は当時50代後半、1人1人育った環境が違うが、その多くが日本語の習得が困難で就労も難しかった。生活習慣も違い、地域で孤立した生活を送る帰国者のために、生活・健康相談、日本語教室の開催、医療通訳者の派遣の他、心身の健康維持に、太極拳、卓球、ダンスのレクリエーションや国内旅行、春節のつどい、料理教室等、交流活動を実施し多様な要望に応えている。コロナの長期化でひとりの帰国者が自死したことを受けて、安否確認、メンタルケアにも力を入れている。2016年に鈴木さんが病に倒れるも、夫人の洋子さんが遺志を継いでセンター代表になり、帰国者支援に尽力。大田区に住む2世、3世を含む300人の帰国者からの信頼は厚く、年間400件近い相談が寄せられている。設立10周年を記念し、満蒙開拓、戦中戦後の時代を生き抜いた帰国者の人生をインタビュー形式で聞き取り、2年半費やして「私たちの歩み」を2020年に刊行。国、東京都、大田区内の小・中学校、図書館に配布され、次世代に戦争の記憶を語り継ぐ貴重な資料となっている。
この度は栄えある賞をいただき、喜びでいっぱいです。表彰状を頂戴し、心のこもった式に参加できましたことにも感銘を受けております。選考委員の皆様、スタッフの皆様のご尽力に対しまして改めて感謝と尊敬を申し上げます。
また受賞された他の方たちとの交流の機会をいただき、皆様が多彩な支援活動をされていることを認識できたのも、意義深いことでした。
わたしたちは15年前から大田区を拠点に中国からの帰国者(残留孤児とその家族)の支援をおこなっています。現在大田区には法で定義されている国費帰国者だけで52世帯80名以上が居住しています。わたしたちが何らかの形で支援をおこなっている帰国者とその家族は100名以上です。
かつて戦前戦中に「満蒙開拓団」として中国東北部に家族ぐるみで送り出された人々がいました。終戦の大混乱の際に、両親と離別死別して孤児となってしまった子どもたちが多くいます。その後、中国人家庭に引き取られるなどして、大陸で生き抜いてきました。成人して帰国を希望しても文革期の混乱もあり、1972年の中国と日本の国交正常化以降も帰国はなかなか進まず、帰国できた時は中高年になっていました。
日本語を不自由なく話せる帰国者は少なく、日常生活にも困難があります。
ことばの壁、生活習慣の違いから地域から孤立している人たちもいます。わたしたちは医療通訳派遣(医療機関を受診する時に同行)、日本語教室開催(日常に必要な日本語をレベル別に指導)、中国語での生活相談(住宅相談からスマホPCの使い方まで)を中心にいくつかの事業を展開して、帰国者の方々が安心して暮らせるよう支援をしています。最近では高齢化が進み、介護が必要な方たちも増加してきましたが、中国語での介護サービスはほとんどないことから、わたしたちはデイサービス的な機能も果たしたく、書道、合唱などの文化活動や舞踊、卓球など身体活動も主催しています。
中国帰国者の方々が歴史の証人であり、戦争の犠牲者であることを踏まえ、まだ終わっていない戦後処理の一つとして、帰国者が地域社会に融和し、安心して老後を送るために今後も活動を継続して行きます。