NPO法人 Alz柏わの会
柏木とき江さんは1990年代、脳、心臓疾患をメインとした急性期を標榜する筑波記念病院(つくば市)で、看護管理者として働いていた。当時の日本の高齢化率は14%、認知症(当時は痴呆と言われていた)は人の尊厳に関わる病気にもかかわらず、医療も行政も病気と言う概念はなかった。しかし、認知症で悩んでいる家族からの相談は暴力、俳徊、昼夜逆転等の深刻な内容だった。県も認知症患者が入院できるよう、県内精神科病院6箇所を指定していたが、受け入れは少なく、保健所から精神科のない同院の一般病棟に入院させてほしいとの依頼が度々あり、積極的に受け入れていたため看護は激務と化した。故筑波大学脳神経外科名誉教授牧豊医師の「認知症は早期の段階で、前頭前野を刺激すれば治る」との言葉で、認知症に特化した通所リハビリステーション(デイケア)を始めた。月1回を2年間無料で実施していたが、看護師を2名配置することで施設基準をクリアし、デイケアの開設にこぎつけた。2000年に入り、全国組織となる「認知症の人と家族の会(旧呆け老人をかかえる家族の会)」の全国41番目の茨城県支部設立に協力。副代表として企画・運営・実施に携わった。病院定年した3年後、家族の会からも離れた後、講演活動や「認知症サポーター」養成に携わるとともに、「特定非営利法人ともに歩む認知症の会・茨城(水戸市)」を設立。その後「特定非営利法人 Alz柏わの会」も設立して理事長に就任。これまでに培った経験を活かし認知症患者やその家族の相談窓口となり、啓発活動を続けている。
この度は、大変栄誉ある賞を頂き、大変うれしく思います。誠にありがとうございます。また、当法人の活動を応援してくださっている支援者の皆様、ボランティアとして活動に加わってくださいました皆様に、心から感謝申し上げます。
世界保健機構(WHO)が昨秋発表した推計では、世界の認知症患者は約5,500万人。日本では730人万人と推計されています。高齢化が進み他人ごとではない自分の問題と誰もが関心をもっている認知症について活動をしています。
2017年9月NPO法人ともに歩む認知症の会茨城、2022年11月NPO法人Alz柏わの会を設立し現在に至っています。
活動が目指すことは、認知症機能低下や認知症を患っている本人、介護家族、認知症に関心のある人々等が集い、本人や介護者から学んだ体験を楽しく伝えあい、知識の共有をしながら、信頼できる仲間作りを、さらに、地域の理解を深めるために認知症について啓発活動を行い、本人や介護者がいつまでも、住み慣れた地域で、本人の力を最大限に生かせるような生活や活動を支え、自己肯定感を持ちつつ、自分らしく暮らし続けられることを目指した支援活動です。具体的には月2回、近隣センターなどの公の場所をお借りし、本人や介護家族少し認知機能が低下し「ちょっと不安、いろいろ知りたい」等の認知症に関心がある人たちが集まり、一回に10人から20人集まり、初めに司会から守秘義務やしっかり聴くことなど4点ほどのルールを伝えます。前半のプログラムは、フレイル予防の一つでもある、声を出すこと、相手が聞き取れる声量で話す近況報告等、後半は筋トレや笑いヨガなどです。その他、役員が集まり企画(月1回)の打合せや無料電話相談(月2~6件、今年度前半では延べ28件)、地域でキャラバンメイトとしてサポーター養成の講師や月2回地元でのワンポイントレッスン「健康で暮らすには」などの啓発活動をしています。
看護師として現役で管理職をする傍ら認知症の支援をし、そこから学んだことを地域に生かせることができ、自分としては大変幸せと感謝しています。
私たちの活動は本当に地味な活動ですが、この度この様な素晴らしい賞で公の形で認めて頂き、自分たちの努力が報われましたことに大きな喜びと共に、今後ますますの励みになります。