社会貢献の功績
中村 豊
1989年から、日本近海固有の天然記念物で、推定生息数6,000~10,000羽の絶滅危惧種カンムリウミスズメの生態調査と保護活動を、世界最大の繁殖地である宮崎県門川町の枇榔島で行っている。カンムリウミスズメは平均体重162gで、海の中をペンギンの様に泳ぐ海鳥。中村さんの調査により、ここで繁殖したカンムリウミスズメは、3~4ヶ月かけて関東沖の海域にたどり着き、サハリン付近まで北上し、日本海を通って、1年かけて枇榔島に戻ってくることを解明した。世界に生息するうちの約3,000羽が生息する枇榔島は、無人島で天敵となる哺乳類は生息せず、最大の天敵は島を訪れる釣人らの残した餌めがけて飛来するカラス類だが、中村さんは対策として、門川町役場を通して渡船に働きかけ、釣人への注意喚起や啓発活動を行った。また、小魚を餌にするカンムリウミスズメが、漁の網にかかってしまうことから、操業中にみかけたカンムリウミスズメの情報提供を漁協へ協力依頼したり、門川町役場の社会教育課と共に、小中学生や一般の地元住民を対象とした講演会や観察会を開催し、カンムリウミスズメのことを知ってもらうための啓発活動を行っている。さらに町の観光資源としての利用を行政に呼び掛け、町興しと絶滅危惧種の鳥や繁殖地の保護保全に取り組んでいる。
この度、社会貢献支援財団様から賞を頂くにあたり、いろいろと考えるところはありましたが、長年にわたり私財を投じ、同じことに打ち込んできた評価と素直に受けとめ表彰式に参加させて頂きました。同席された多くの受賞者の方が、私以上に長年にわたり貢献をされていることを知り頭が下がる思いでした。このような機会に参列させて頂いたことは次への励みになり、大変感謝しております。ありがとうございました。
ここに私が評価されたことを少し紹介致します。1989年から枇榔島に上陸し、カンムリウミスズメの生態や行動など繁殖地での基礎的な調査や漁船をチャーターした追跡調査などをボランティアで29年間継続して行いながら、生息地である枇榔島を保全するためにゴミや釣り針、釣り糸拾いの活動を行ってきました。さらに世界最大の繁殖地を持つ、カンムリウミスズメの町としての意識を高めるため、釣人や地元の漁業関係者にカンムリウミスズメの存在を働きかけ、門川町と一緒に年に3~4回、講演会や観察会を開いてカンムリウミスズメの魅力を訴えています。また宮崎県総合博物館のリニューアルで、カンムリウミスズメのコーナーを新設してもらい、県民へその存在を知らしめ希少な鳥がいる事をアピールしています。2007年には門川町と共に「カンムリウミスズメ絵物語」を発行し、門川町民にカンムリウミスズメのことをもっと知ってもらうために町立小学校に配布をしてもらいました。1989年から取り溜めたデータや新規に得られたデータを基に、2010年11月には枇榔島とその周辺海域が国の特別鳥獣保護区に設定され、一層の保護の網がかけられるようになりました。しかし未だにカラス類によるカンムリウミスズメの食殺は減っていません。そこで、釣り人へのマナーの徹底をお願いしたり、門川町や門川町が募集したカンムリウミスズメ倶楽部の人たちと一緒にゴミ拾いなどの活動を行い、釣り人へのマナー意識の向上を図っています。
その他、ドブネズミやクマネズミが枇榔島に侵入していないか、ネズミ捕獲罠やセンサーカメラを設置してモニタリング調査を定期的に実施し、いち早く緊急な対策が取れるように役場と連携しています。
最後に2016年までは、渡船代や調査船の借り上げ料など全てのことを自己資金で行ってきましたが、最近は門川町の補助があり非常に助かっており感謝しております。