人命救助の功績
大谷 雄一郎
永井 真人
2015年6月28日、千葉県市川市東浜付近の干潟で野鳥観察会を開催していた大谷さんと永井さんは、「溺れている人がいる」と助けを求められた。現場に先に向かった永井さんが、突堤から100メートル程沖で浮いている女性のもとに泳ぎ、あおむけで浮いていた女性の頭部を抱えて戻ってくる途中、大谷さんも泳いで救助に向かい、力尽きかけていた永井さんと交代して女性を岸まで運んだ。外国人女性2人と男性1人が、現場で貝採りをしているうちに潮が満ちて起きた水難事故とみられている。
大谷 雄一郎
今回、このような賞をいただき大変ありがたく感じています。
表彰式においては、自分たちのように人命救助で受賞された人以外に、世界各地での活動紹介をみて、「本当に素晴らしい志で活動している人たちがいるんだな」、「こんなに素晴らしい活動をしている日本人がたくさんいるんだ」と感動しました。これからの自分の行動の手本としていきたいと思いました。
水難事故のあった当日は、毎月開催している野鳥観察会のイベントに参加していていました。毎月開催されるイベントなので、その日も観察会で参加者と鳥について話していたところ、突然女性が「溺れている人がいるので助けてください!」と走ってきました。急なことだったのですが、講師の永井さんが現場に直行し、私は事務所と消防に連絡した後、参加者に待機してもらい現場に向かいました。到着した時にはすでに永井さんが岸から100mくらいのところにいて、溺れた人を引っ張って岸の方に向かっていました。ただ、体力の限界だということだったので、すぐ向かうことにしました。
この時は特に何か思うこともなく、早く現場に向かって永井さんと交代しなくちゃ!と少し緊張していたくらいだと思います。
実際向かってみると思ったよりも遠く感じました。永井さんと交代して岸まで泳ぐときには、「早くこの人を岸まで運ばなくては」ということだけを考え、がむしゃらに泳いでいました。しかし、人を引いて泳ぐのは思いのほか大変で、途中で何度も海水を飲んでしまい、自分も溺れそうになってしまったので、これでは共倒れになってしまうと思い、少しペースを落としました。なんとか岸に着いたときには、その場からしばらく動けないほど疲れていて、溺れた人を引いて泳ぐことの大変さを思い知らされました。
岸に着いたらもう一人溺れている人がいるので、助けに行ってほしいと言われましたが、その体力は残っておらず、断ることしかできないのが歯がゆく感じられたのを覚えています。
岸に着いた後は、近くにいた人たちに手伝ってもらい、救急隊がくるまで対応をしてもらったのですが、心肺蘇生法のための優先順位ややり方など、ぱっと出てこないことや、わからないことがあり、ちゃんと知っておかなくてはいけないなと感じました。
救急車や消防隊、海上保安庁など、多くの方たちが現場に集まってきたので、もう自分のできる事はないと思い、観察会の参加者のところまで戻りました。
溺れた人1人を助けることはできましたが、それで力尽きてしまい、もう1人を助けに行くことができなかったのですが、それはどうしようもないことだとは思うので、達成感があるわけでも、悔いが残るわけでもない、何とも言えない非日常を体験した1日でした。周りの人からは3割くらい讃えられ、7割くらい怒られた感じでした。
2年経ったあとでもこのように受賞の機会を与えていただけましたので、少しはいいことをしたのかなと思います。
永井 真人
まさか、表彰をされたり、受賞するなどとは、少しも思わずに、人命救助をしましたが、一番の理由は、現場にいた20名ほどの人が「誰も行かなかった」からです。後で振り返れば、そうできたのは、親以外には、守るべきものや人もいなかったことと、多數の海外渡航で、さまざまな人のやさしさに触れたり、助けてもらったことがあるのも理由かもしれません。
今回の式典への参加は、一度きりの人生でこういう機会もないだろう、親孝行がてらと出席をさせてもらいました。
式典に参加したことで、全国で、さまざまなケースで人命救助をした人、している人がいるのだなと実感しました。長年、東南アジアなどで、学校建設や、医療業務に携わる人たちを間近にして、話しを聞いて、感動したのと同時に、ほんの1時間足らずの人命救助で、表彰されるのはおこがましいし、恥ずかしいなという気持ちにもなりました。1人の人の命を微力ながら救えたことは、今後の人生の自分への励みになると思いますが、救えなかった人たちのことが、今でも心残りです。
売名行為という批判や、結果オーライだったけど、無茶だという意見も聞いて、落ち込んだりもしましたが、今回の式典への参加で、それらを気にせずに、生きていく気持ちになれました。そして、困っている人がいたら、手を差し伸べることはやめないように心がけたいと思います。ありがとうございます。