NPO法人 ちいきのなかま
守永惠さんは、自身の子育て期から地域活動をボランティアとして開始し、子育てをする人に「仕事」として寄り添うため 2008年に団体を設立、事業も受託し、以来佐世保市で、産前・産後・育児に不安を抱える母親たちを支援してきた。主に子育て経験のある女性たちがサポーターとして、それぞれの家庭環境による不安や問題に丁寧に寄り添い、育児と家庭を支援する活動を行っている。守永さんは自ら行政に赴き、自身の経験を基に、子育て中の母親が必要とする支援を訴え続けた。結果、委託事業、非営利活動においても、きめ細かい様々な事業を実現させて、子育てで孤立しがちな親子に手を差し伸べている。現在、受託事業の「ファミリーサポートセンター事業」では、年間3,000件の利用があり、ボランティアと利用者の登録者は2,400名にも及ぶ。サポーターたちは子育ての不安に自身の経験と研修で最新の知識を学びつつ応え、時には産後鬱やDV等の問題にいち早く気付き公的支援につなぐ。地域のコミュニケーションも希薄になった今、親を見守り育てる活動は非常に重要で、それを「恩送り」と表現し、後世への継承のため愛情を伝える仕組みづくりを行っている。
九州は男性の家事・育児参加において後進地域でしたし、今も全国的に見てまだまだ後進地域です。37年前、ボランティアで始めた「子育て支援」の理解促進の道のりは想定以上に困難なものでした。「子どもを預けて通院したいが、家族の理解が得られない…」と母親の支援が叶わなず、手遅れで入院することになったり、暴力的な夫に悩む方の家庭に「友人のフリ」をして関わり、公的支援につないだ支援もありました。子育て講座をした時には、内容が出産に関わることだったからか、市内の産婦人科の医師から呼び出されて、お叱りを受けたこともあります。そんな時代でした。
私たちの活動の支援者の多くは自身の経験をベースにケースに対応しながらブラッシュアップして、笑顔で日々活動を続けています。活動が楽しいという言葉に私たちが支えられています。
支援者の皆さんは「まひるの星」だなと思います。昼の空にも星は輝いていますが、私たちには見えません。多くの人には見えていないけれど、活動で支えられている人はたくさんいます。支援から時間が経過しても、折にふれ、支援したご家族からお便りがある、という報告をいただきます。また、帰省の時に駅で、偶然昔支えてもらったおばちゃんに会い、荷物が重そうだったからと、かつて支援した子に家まで送ってもらった、とうれしく語る支援者の方もいました。「人は愛されたから愛することができる」数々のエピソードをお聴きしていて、そう思うことができるし、それはとても幸せなことで未来への希望でもあります。
この度の表彰は、この国のさまざまな地域で子育てを地道に支えている、多くの方々の活動への評価だと思い、深く感謝しています。「表彰のニュースを夫に見せて、私たちの活動はこんなに意義あること」と自慢したという支援者の方がいました。子育て支援という言葉は定着しているのでしょうが、中身を知る人は少ないのかもしれません。今回、表彰という形で評価されるということの意義を感謝の気持ちとともに改めて感じたことでした。
そんな支援者のみなさんが活動を継続できるように「ケアする人をケアする」ことにも私たちは近年注力しています。ここ5年ほど、市内で家を借りて「みんなの実家」事業に取り組んでいます。その場所は子育て世代の方々と地域の高齢者の相互支援の場として育くんでいます。できれば近い将来、今の支援者の方々が、活動をしなくなったとしても集える場所になればと願っています。