NPO法人 Umiのいえ
2005年産科医師不足や、産科の閉鎖が全国的に広がるとともに、安全ではない産科医療が社会問題となり、健全なお産環境の維持に、代表の齋藤麻紀子さんは危機感を抱くようになる。母親同士がつながり、健康に妊娠期を過ごし、元気に赤ちゃんを産み、育てられるように、2007年に「Umiのいえ」をスタート。「産んでよかった、生まれてきてよかった、生きててよかったと思える社会をつくる」をビジョンに、出産子育ての学び場、生きづらさを感じる時の駆け込み場として、育児支援と母子支援者向けの啓発事業を中心に行っている。助産師や医療者、専門家による産前産後に関する講座をはじめ、子育て、セルフケア、食育、命、性教育など、月に25ほどの講座の開催、出産当事者同士が語る会や、手縫いや編み物といったハンドメイドや歌や楽器などで自己表現するワークショップも行っている。これまでのべ2万組以上の親子、5,000名以上の助産師、医療者と専門家が参加している。また出産や子育てに関する相談事業も行い、母子が抱える様々な声に寄り添っている。「Umi」には、心と体の「膿を出す」、赤ちゃんを「産み育てる」、元気・夢・愛を「生み出す」の思いが込められている。
この度は、第59回社会貢献者表彰に選んでいただいたこと、地道な活動に光を当てていただいたことに深く感謝を申し上げます。私どもが活動の対象としている人たちは、病気やしょうがいや生活困難など、特別な事情を抱えている人ではなく、いわゆる、見た目は普通の、一般的な暮らしをされている人たちです。しかし、生きづらさは、どの家庭にもあり、問題のなさそうなところに、問題があります。
社会は、人が「生まれる」ということから始まります。しかしながら、近年は、「妊娠しにくい」「産みにくい」「育てにくい」「人に助けを求めにくい」「愛しにくい」などなど、産み育てがより一層困難になってしまいました。SNSの発展で情報におぼれ、人に尋ねるより、携帯電話にかじりつく。子育ての感覚は、親から受け継いだものではなく、インターネットから流れてくる情報に操作されてしまうようになりました。
産むことも育てることも、理想どおりにはいきません。いつなにがおこるか、お天気と同じで、子どもという自然をコントロールすることはできません。それまでの社会活動で、時間通りや計画通りに暮らしてきた人にとっては、非効率な子育ては苦しいと感じることばかり。親の仕事は、子どもに安心を与え、健康を与えることです。ですので、まずは、親になった人に「安心とはなにか」「健康とはなにか」を学ぶ機会を提供していきます。
Umiのいえは、産み育てのいい塩梅をお伝えしていきます。がんばりどころ、手のぬきどころ、抱っこ、おんぶ、ごはんにお味噌汁。環境も人間も健やかに育む知恵を学びあい、日本の古き良きものを次世代に残していく活動をしていきます。
元気で優しい子どもがふえることで、手を借りる必要のある子たちを助けることができます。「また産みたい」「子どもがかわいい」と母たちが心底から湧き出るように思えたとき、その力は社会への還元にもひろがっていくと、私は思います。
世界平和の鍵は、戦士でも議員でもなく、母たちです。これからも、お母さんがお母さんであり続けられるよう、活動していきます。