社会貢献の功績
高橋 美知子
盛岡市の公民館の一角に図書室「うれし野文庫」を開設して以来、40年間近く子どもの本にかかわる活動に携わり、岩手県を中心に青森、秋田の各県で子どもたちにストーリーテリングや読み聞かせを、また大人には子どもと読書の大切さについて講話や講座を行っている。そのようななか東日本大震災に遭遇し、とりわけ陸前高田市では市立図書館が全壊し、館長ら職員7人が犠牲になった。髙橋さんは「この街に何ができるのか。子どものための小さな図書館なら作れるのではないか」と思い、同市に小さな図書館を作るための活動を開始した。その後、市側から用地の提供を受け、2つの団体からの助成も決定し、トレーラーハウスによる子ども図書館「ちいさいおうち」を平成23年11月25日に開始した。「ちいさいおうち」は開設以来の利用者が約15,000人を超え、寄付等により蔵書も約4,900冊に増えるなど、被災地の子どもを育む図書館として運営されている。
11月29、30日、社会貢献表彰式の準備と授賞式の2日間、私は48名の受賞者の方々とご一緒に時間を過ごしました。中には命をかけて、体を張っての活動をしている方々もいらっしゃり、そのお仕事の内容を知るにつけ、感嘆、感服せざるをえませんでした。同時に同じ舞台に立って良いものかとたじろぎました。それは、華やかな2日間で、これほどの厚遇をお受けしたことはございませんでした。
思い起こせば、あれは、4月でしたでしょうか、公益財団法人社会貢献支援財団の天城専務理事が岩手県陸前高田市までいらっしゃり、私の40年にわたる活動とこの大震災の地にこども図書館「ちいさいおうち」を作った理由を色々お尋ねになりました。
その時、‟社会貢献“という言葉が遠くに感じられたことを鮮明に記憶しております。
そして9月に社会貢献者表彰受賞の決定通知を頂いたときは、まさに、ぽかん!としてしまい、理解致すのに時間がかかりました。それほど、私の中には‟社会貢献”という言葉がありませんでした。
40年前、子どもたちに本を読む喜びを伝えたい思いから、ある施設を訪問し、ストーリーテリングと本の紹介をはじめ、1977年に地域文庫として「うれし野文庫」を開設。2000年に特定非営利活動法人を取得し、「うれし野こども図書室」と改名。そして今に至るまで、厭きることなく様々な形で活動を続けて来ました。
図書室には選書をした本が赤ちゃん絵本からヤングアダルトまで7,000冊以上、所せましと並んでいます。図書室の開館、勉強会、講師を招いての講演会講座などの開催、学校訪問をしてストーリーテリングを広め、子ども達には読書の楽しさを、大人たちには子どもの成長期に大きな役割を果たす読書の力を伝えてまいりました。
2011年3月11日、東日本大震災が起こり、こんな危害が自分の場で起こるとは、正に天と地がひっくり返った思いでした。被災地に通いながら必死に考えました。必要とされ、自分に出来ることは何か!? 最な答えが返ってきました。出来ることとは、長年培ってきたことしかなく、小さくても良い、安心して落ち着ける子どもの図書館を造ることでした。奔走しました。2団体の民間助成団体が手をしっかり手を差し伸べて下さいました。もう、まる4年もたち、陸前高田市に設置したこどもの図書館「ちいさいおうち」は多くの方々の支援を受けながら地域にしっかり根を下ろしています。
授賞式から時間がたち、今回の受賞をしみじみと有難く感じております。社会を支えている様々な活動の中に、子どもと本に関わる活動を取り入れて下さった事、すなわち「読書」が人間形成上大きな働きを果たしている事への証、表彰はご褒美と取らせていただき、励みとしてこれからの活動の糧にして参ります。ありがとうございました。
髙橋 美知子