社会貢献の功績
女川1000年後の命を守る会
平成23年に発生した東日本大震災で、宮城県女川町は43.7メートルの津波により住宅の9割が被災し、873人が死亡・行方不明となった。その中で震災の年に女川第一中学校に入学した生徒たち64名が、社会科の授業で「愛するふるさと女川に出来ることは何か…」と考え始め、同年11月 (1)災害時に住民同志が助け合える絆作り、(2)広い避難路と高台の町づくり、(3)震災を記録に残す、の3つの対策を実現させ、「1,000年後の命を守ろう」と活動を開始した。その願いの一つとして、町内21ヵ所の全ての浜に津波の襲来を伝え、全ての人の命を守ための「女川いのちの石碑」を建立する計画を立て、目標となる1,000万円の募金を同25年2月に開始し、半年で目標額を達成。同年11月に最初の石碑を完成させた。中学校を卒業した現在も約20名が石碑を9基完成させ(残りは高台集団移転が完成後)、震災時にいただいた多くの支援の恩返しとして、自然災害から人々の命を守る『女川いのちの教科書』をつくり、日本、そしてアジアの国々に届けようと活動を続けている。
「社会貢献者表彰を受賞して」
11月30日、大勢のご来賓の皆様にご臨席いただき、東京帝国ホテルで安倍昭恵会長から表彰された感激と興奮が未だに続いております。また、長年の素晴らしい取組を積まれた受賞者の皆様から、周りの人のため、より良い社会作りのため何ができるのか等、貴重なお話をたくさん教えていただきました。同時に、数十年も地域社会を支え、日本をリードしてきた方々と同じ席に着かせていただけたことに恐縮するばかりでした。
私たちの合言葉は、「1000年後の命を守る」です。中学1年生の社会の授業を通じて、自分たちが東日本大震災で経験した辛く、悲しい体験を二度と繰り返したくないとの一心でこの5年間活動を続けてきました。津波から全ての人の命を守る方法として「①絆を深める、②高台へ避難できる町づくり、③津波の記録を残す」、の3つを実現させようと様々な活動をしてきました。浜の人や町を初めて訪れた人たちと一緒に津波からの避難訓練を実施しました。また、町内にある21の浜全てに津波到達地点よりも高い所に津波からの避難を呼び掛ける「命の石碑」を建てるため100円募金で1,000万円を集める活動等を行いました。
しかし、大震災で日本中、そして世界の多くの方々から私たちがいただいたご支援の御礼の一つとして、高校に進学してから毎月2回程集まり『女川命の教科書』作りを行っています。それぞれが違う高校で勉強や部活動、学校行事等も異なるため、集まる日や場所を決めるだけでも毎回苦労の連続です。年末には合宿しながら、教科書の原稿を書いています。この『女川命の教科書』は、日本中の海に面している都道府県の全ての中学校、そして、世界中の自然災害で命を失う人の4分の3が集まるアジアの国々の中学生に届け、一人でも多くの人の命を助けていきたいのです。
そのためには、出版社を探して書籍化したり、英語に翻訳したりすることが必要です。また、小学校低学年・中学年・高学年向けの教科書も作っていき、全ての人々が自分の命、そして周りの人の命を守っていける教科書にしていきたいのです。高校では、同級生から「いつまで震災のことを引きずっているの?」と言われることもあります。しかし、私たちは自分たちの命が続く限りこの活動を続けていくつもりです。1000年後の人たちが再び来る巨大津波から命を守ることができるために。
「夢だけは 壊せなかった 大震災」これは女川の中学校の同級生が1年生の時に考えた俳句です。私たちの夢を1000年後に実現することができるよう、これからもご指導、ご支援をどうぞよろしくお願い致します。
女川1000年後の命を守る会
会長 阿部 由季