海への貢献の功績
NPO法人 黒潮実感センター
高知県の西端部、大月町柏島(かしわじま)で、平成10年から活動を開始、平成14年にNPO法人を設立して以来、同島の海づくりに取り組んでいる。神田センター長を中心に、柏島全体を海の博物館としてとらえ(1)自然を実感する取組み(2)自然を活かした暮らし作りのお手伝い(3)自然と暮らしを守る取組みをテーマに、人の暮らしのそばに豊かな海があり、その海を維持する持続可能な里海づくりを目標に活動を続けている。活動は地域住民、学校、行政、大学等とも連携し、地方の1つの島の活動から県へ、そして全国へと広がりを見せている。
社会貢献者表彰受賞にあたり
このたびは社会貢献支援財団のご推薦により栄誉ある賞を賜り、心より御礼申し上げます。
私たちNPO法人黒潮実感センターは、高知県の西南端にある周囲3.9km、人口450人ほどが暮らす小さな島、柏島を拠点に活動しています。
柏島の海は暖流黒潮と、瀬戸内海から豊後水道を南下してくる栄養豊富な水とが混じり合うことで、周辺海域にはその数日本一の1000種を超える魚たちや多種多様な海洋生物が生息しています。
人の暮らしのすぐそばに日本一多くの魚が気持ちよく暮らす海がある。この環境を、そして風景を残したい。その想いから私は1998年単身柏島に移り住み、2002年NPO法人黒潮実感センターを立ち上げました。センターでは柏島の豊かな自然環境だけでなく、そこに住む人たちの暮らしも含めて、「島が丸ごと博物館(ミュージアム)」と捉え、持続可能な里海づくりを目指した活動を行っています。
私たちが提唱する「里海」とは「人が海からの豊かな恵みを享受するだけでなく、人も海を耕し、育み、守る」を意味します。
持続可能な「里海」の実現に向けてセンターでは大きく三つの取り組みを行っています。
一、 自然を実感する取り組み
二、 自然を活かした暮らしさくづくりのお手伝い
三、 自然と暮らしを守る取り組み
自然を実感する取り組みでは、柏島の海で調査研究活動を行い、その成果を地元住民や柏島を訪れる観光客に還元するための里海セミナーを行っています。さらに次代を担う子どもたち向けに海の環境学習や体験実感学習を、成人向けにはエコツアーを開催し、柏島の海のすばらしさを実感して貰う取り組みを行っています。
しかし豊かな自然環境があっても「環境だけでは飯が食えない」と言われる中で、豊かな自然環境を活用した暮らしづくりのお手伝いとして、アオリイカの増殖産卵床設置や藻場再生など「海の中の森づくり」活動を、地元漁業者やダイバー、子どもたちと一緒に行っています。
豊かな自然がありそれを利用して経済が活性化しても、一方的に海からの恵みを搾取するだけでは良い環境は残せません。そこで大事なのは自然と暮らしを守ること。この活動では自然環境の変化を把握する調査を行ったり、サンゴや藻場の保全活動、さらには大勢訪れる観光客の受け入れ態勢を整えつつ、島独自のローカルルールとしての「柏島里海憲章」を策定し、島の環境と人々の暮らしを守っていこうという取り組みを行っています。
海からの豊かな恵みを受ける里海は、その一方で地震による津波や、台風に伴う高波、高潮等の自然災害の影響を強く受けるところでもあります。黒潮実感センターでは高知県に甚大な被害を与えうる南海トラフ大地震を想定した災害リスクマネジメントの強化にも取り組んでいます。
私たちの活動はいわばリレー走者のようなものだと思っています。今あるすばらしい柏島の環境は私たちが作ったものではありません。先祖の努力により受け継がれてきたものです。私達は現在、先祖から受けとったバトンを持って走っている状態です。私達の走りよういかんで順位を下げるかもしれないし、上げることができるかもしれません。先祖から受け継いだバトンを少しでも順位を上げて渡したい。そういう願いを込めて私達は活動を続けて参ります。今回の受賞を契機にさらに活動に邁進したいと思います。今後ともどうぞご支援のほど、よろしくお願いいたします。
センター長 神田 優