社会貢献の功績
野菊荘
京都市で、昭和17年に戦争で配偶者を失くした母子の救済を目的に施設の運営を開始し70年以上。時代の変化により、利用者はその後、未婚や離婚による生活困窮母子、サラ金被害母子、近年ではDV被害や児童虐待、心身障害や精神疾患により生活や養育が困難となった母子へと推移してきている。定員30世帯で、いづれも逃げるようにして施設に入ってくる母子に少しでも快適に過ごしてもらうよう、またその後の自立を支援するために行政の隙間を民間で補う活動を続けている。
この度、公益財団法人社会貢献支援財団様より、野菊荘の取り組みに対し社会貢献活動表彰をいただきました事は、誠に身にあまる光栄に存じ胸をうつ感謝と共に厚くお礼を申し上げる次第でございます。
野菊荘は昭和17年に恩賜財団軍人援護会京都府支部によって、戦死した軍人遺家族の母子を対象にした授産・託児事業として設立されました。
昭和55年1月、寮長であった芹澤栄之が老朽化した施設改築のために社会福祉法人宏量福祉会を設立し、私財を処分し寄付した2000万円、中国展バザールを開催して得た収益、寄付金の合計3140万円と積立金500万円の自己資金に、借入金5660万円と国庫補助金と京都市補助金を併せ、総工費3億6100万円をかけて昭和56年4月新築したのが現在の野菊荘の建物です。
新築された野菊荘は利用者の生活の向上のために、各居室内にバス・トイレ・台所を配置し当時としては画期的な施設として生まれ変わりました。また、DV被害者や借金からの逃避等の「かけこみ相談」への緊急避難対策として、全国で初めて定員以外に三室の緊急一時保護室を設置しました。当時はDVという言葉や緊急一時保護制度もなく独自運営していました。翌年昭和57年にNHKで「現代の駆け込み寺」として緊急一時保護事業が紹介され、放映により全国から避難してくる母子が殺到しました。
平成13年にDV防止法が制定され、DV被害者への支援が本格化する中で、平成17年には京都市内唯一の民間シェルター「シェルターみやこ」を開設しました。緊急一時保護事業を施設外で実施することにより、行政機関からの一時保護委託だけではなく、様々な民間団体からの依頼や利用者との直接契約による一時保護が可能となり、幅広いニーズに対応した一時保護施設となりました。
平成23年4月には、これまでのDV被害者支援の取り組みが評価され、京都市よりDV相談支援センターの運営を委託され、同年10月に開所しました。これにより野菊荘が行う「社会的養護事業」は、DV相談支援センターによるDV被害者の相談・支援、シェルターみやこによる緊急一時保護、野菊荘本体施設での保護受け入れとワンストップ支援体制を持った施設となりました。
この度野菊荘の70年以上にわたる母子保護の実績を評価いただき、社会貢献功労賞をいただきましたことは、私たちにとってとても大きな励みとなりました。この受賞をバネに今後さらに地域社会に貢献できる施設として、地域の皆様方のご理解とご協力をお願いしながら、DV被害者やひとり親家庭の方々に対する新たな事業の実施に向けて取り組むと共に、施設機能のさらなる充実を図っていきたいと考えています。
芹澤 出