社会貢献の功績
久保田 英朗
河野 伸二郎
昭和62年からフィリピンでの歯科医療ボランティア活動を行っている。同国のセブ市やネグロス島で公衆衛生活動を根付かせる活動を行なった。その過程で、口唇裂口蓋裂患者が多くみられ、3年の準備期間を経て、ネグロス島で平成13年にフィリピン口唇裂口蓋裂手術事業を開始した。10年間で200人以上の手術を行っている。2014年は横須賀RCの支援により、現地医療従事者への技術移転のため、職業訓練を現地と横須賀で行った。
久保田 英朗
私たちは、フィリピン国での口唇裂・口蓋裂児に対するボランティア手術活動を行っています。アジア人の口唇口蓋裂の発生率は0.2%程で、日本では育成医療や厚生医療などの医療保険制度が整備されており、出生時から成人に至るまで一貫した治療を無償で受けることが出来ます。一方、アジアの国々では、十分な医療保険制度が確立されておらず、かつ貧富の差が激しいため、口唇裂による審美的障害や口蓋裂による発音障害を持ったまま大人にならざるを得ないという状況の国々があります。われわれのフィリピンでのプロジェクトは、年1回の活動としてスタートし1999年から現在まで10回以上の活動を行い、手術を行った患者は通算200余名になります。
活動はフィリピン国ネグロス島のHoly Child病院で、現地ロータリークラブと歯科医師会の依頼に基づいて行っています。この10年間の活動でも患者数は一向に減少せず、毎年多くの患者が我々の医療活動を待ち受けています。その理由として、①口唇口蓋裂の患者を手術する十分な技術をもった現地の医師が少ないこと、②貧困のため患者の家族が年収をはるかに上回る治療費を支払うことができないこと等が考えられます。そこで、私たちは現地の医療関係者にこれらの患者を治療する医療技術の移転を図ること、ならびに口蓋裂手術後の患児に対し、言語治療を行う現地の言語療法士(Speech Therapist)を養成することで、当該地域における口唇裂・口蓋裂患者の医療技術を向上させ、ひいては修学前で未治療のまま過ごしている患児の数を減少させたいと考えています。
2014年には、ようやく現地の歯科医師、言語聴覚士、看護師等を日本に招聘し、口唇口蓋裂の医療技術を研修することができました。活動10年を経てようやく医療技術移転の糸口が見えてきた思いがします。今回、貴財団の社会貢献賞の受賞が決まり、私どものみならず、現地の医療スタッフの励みともなりました。今後とも、本活動を通じて日本とフィリピンの友好関係を築いていきたいと思います。最後に貴財団関係者の方々に感謝申し上げます。
河野 伸二郎
小学校5年、6年生時、父の仕事の関係で、インドのカルカッタ(現コルカタ)で過ごしました。昭和40年41年のことです。貧富の差を目の当たりにした私は以来、社会人になりましたら、発展途上国のお役に立てることができればと考えておりました。
神奈川歯科大学を卒業して2年目に大学の先輩らが、フィリピン、セブ市で歯科ボランティア活動をなさっていると聞き、さっそくお仲間に入れていただきました。昭和62年当時は、治療内容は抜歯が主です。地域の発展とともに食の欧米化は戦後の日本と同様、虫歯の多発を招きます。私共の無料歯科診療だけでは、到底追いつきません。そこで、小学校を中心に歯科衛生士を派遣し、歯ブラシ指導やフッ素洗口等の公衆衛生活動を現地の行政とともに行ってきました。小学校の検診、指導の過程で、約1%(日本では0.5%)の児童に口唇口蓋裂がみられ、その多さに驚きました。当然何の処置もされておりません。言語障害と外見による差別に苦しんでいます。成人の患者らは就業や家族を得ることに多大な障害となります。帰国し、すでに他国においてこの種の手術ボランティアをされておりました久保田英朗教授にご相談申し上げ、平成10年よりこの事業の立ち上げを始めました。3年の準備期間を経てネグロス島ドゥマゲッティ市において実現し、以来年間20名程度の方々の手術を行っております。
さまざまな、困難はございましたが、短期特別医療免許の取得が最も高いハードルだったように思います。すでに10年以上、当地域において一般歯科治療のボランティアを行っており、政府関係者と良好な関係を築いていたこと、また、素晴らしい現地カウンターパートを得ていたことが、解決の最大理由でしょう。術後の親御さんらの安堵の笑顔と感謝の言葉をお聞きすると、また来年も実行しようと思います。彼らの人生は確実に変わっていくことと推察されます。
社会貢献支援財団におかれましては、私共の活動を取り上げていただき、また過分な表彰までいただき誠にありがたく存じ上げます。式典祝宴における他団体との交流・情報交換はそれぞれの事業の向上に大いに役立つことと思います。あわせて感謝申し上げます。ありがとうございました。