社会貢献の功績
特定非営利活動法人 3keys
児童虐待数が平成22年度5万件を超え、3万人の子どもたちが親もとではなく、児童養護施設で暮らしている。そしてその子どもたちの多くは、不安定な家庭環境などで学習が大幅に遅れた状態で入所している。施設でも職員1名が6名の子どもたちのケアをしており、資金も不足している中、なかなか学習支援にまで手が及んでいない。3keysは平成21年から大学生をはじめとした学習ボランティアの採用、育成をし、独自の学習プログラムを用いて、施設にいる子どもたちの学習を支援することで、子どもたちの自信、意欲を育む活動をしている。
吉沢 隆志
私がはじめて児童養護施設(以下、施設)と出会ったのは大学2年生の時。当時家庭教師や塾講師をやっていた私の目にとまったのが、近所の施設で学習ボランティアを募集しているというチラシでした。当時は施設の存在すら知らず、孤児院だとばかり思い込んでいましたが、9割以上の子どもたちには親がいて、虐待や貧困などで親と生活が出来ないということを知りました。虐待や貧困という問題が日本の社会で起きているとは思ってもいなく、自分の無知さに恥ずかしい思いをし、もっと知りたいという思いから学習ボランティアに応募し、中学2年生の女の子を教える事になりました。
驚いたのはほとんどの子どもたちの学習がひどく遅れていたこと。子どもたちのもともとの家庭環境は学習に集中できる環境ではなく、施設へ来るまでに、児童相談所や一時保護所、転校などを経験し、更に取りこぼしが増えてしまい、施設に来た時点では、子どもたちの能力や意志に関係なく大幅に学習が遅れてしまっていました。施設に来てからも、なぜ自分が施設で暮らさなくてはいけないのかという困惑や不安に加え、20〜100人程度の集団生活の中で、勉強も身に入らず、授業についていけなくなり、学校は休みがちになる子も多くなっていました。
そして施設職員も一人で大勢の子どもたちの家事、育児、心のケアなどをする中で学習や宿題をみる余裕もありません。そのようにして子どもたちは本人の能力や意志に関わらず、学習が遅れ、自信や意欲を失い、将来の可能性が狭められています。大学全入時代の中、9割の施設の子どもたちが高卒以下で社会に出るという点をみるだけでも、環境的な格差を感じます。
3keysは虐待や貧困などで親と暮らせなくなり施設に来た子どもたちでも、自らの可能性を狭めることなく、夢をかなえていけるような支援をしたいと考えています。施設の職員の方々の役割は虐待などの傷を負った子どもたちに対して、親からはもらえなかった愛情を注ぎ、食事ができて普通の生活ができるという安心した環境を提供することです。そして3keysは職員の方々の手が行き届きづらい学習や進学の支援をしています。施設にいる子どもたちの生活環境や心の状態、学習遅れの傾向を分析し、それにあった学習プログラムを民間企業などと一緒に作り提供をしています。また施設の経済的状況を踏まえ低料金で支援ができるよう、学習ボランティアを独自プログラムで研修・育成し、派遣をしています。
子どもたちは未来の担い手であり、未来の希望です。虐待や貧困といった社会問題が、子どもたちの可能性を狭めてしまうことは、社会や国の未来を狭めることになります。3keysはどんな環境で生まれ育った子どもたちでも、自らの可能性を発揮できるような社会を目指していきます。