特定分野の功績
直嶋 正三
昭和 45 年に(株)ショウエイに入社、カム研磨の職場に配属となり、以来舶用エンジンのカム研磨を主に製造に携わって来た。
舶用エンジンのカムは、燃料を爆発させる動作、吸入、圧縮、爆発、排気を、繰返し行ない駆動させる為の特に、重要な部品であり、カムの出来映えにより、エンジン性能を左右する程である。その製作には材料選択、機械加工、耐久性を強くする為の、熱処理、研磨加工等、いずれも重要であるが、特に最終工程になる、カム研磨作業では、カムの各寸法精度及び特にカムとローラーの接する摺動面は、耐久性を持たせる為に、表面硬化処理がされているので、研磨焼け、研磨割れが発生しやすく作業は、経験と熟練した技能が必要となる。
入社当初は馴れない作業でも有り、戸惑いもしたが、諸先輩方も多くおられ順調に技術を習得してきた。昭和56年に岡山県に製造部門が移転し、数年後に大阪工場を売却、岡山にすべて移し、それに伴い、私も岡山(現本社工場)に赴任、当初は周りの環境も変わり、大変であったが、もっと驚いたのは、作業者の技能、仕事に対するレベルの低さ等、これには正直、先が思いやられた。ただ各従業員の人達は素直な方が多く、根気よく、繰り返し指導すれば良い技能者に育つと思った。
機械操作よりも、計測器類を確実に使える様に指導し、機械作業に順次取り掛かってもらった。その後も不良品の多発等、なかなか技能向上とは行かなかった中で、造船不況が起り、会社も大変苦しい時期が続いた。それら難局も何とか乗り切り、作業者の姿勢、技能も漸やく製造工場らしい体制となり、御得意先の各メーカーからの要望にも応えられる技能を各工程の作業者が身に付けだし、技能にも自信を持てる様になった。又設備も新しく自動化を計る為に、機械メーカーに協力してもらい、開発したカム研磨専用機を順次導入し、さらなる効率品質向上を計った。
この頃には燃料ポンプ駆動装置、カム軸組立等、従来の部品単一での受注でなく、組立を含めた受注が主になり、加工技能だけでなく、組立技能も必要となり、未経験の事ばかりでメーカーに指導仰ぎながら、技能を習得し、この事が作業者の大きな自信となり、さらに高精度を要求されたICU電子燃料噴射制御装置の製造、組立に成功した。現在はショウエイの核となる製品としてカム以上に将来性の見込める製品と期待されている。今後も後輩に技能を伝えながら、私自身も共に成長して行きたいと思う。
受賞の言葉
永年舶用エンジンの、カム製造に携わって参りましたが、此の度は栄えある、社会貢献者として表彰して頂き厚く御礼申し上げます。家族共々喜び感謝しております。御推薦を賜わりました関係機関の皆様方に心より御礼を申し上げます。
研磨一筋に、38 年間にわたり一貫してカム製造に携わってまいりましたが、今後も技術の伝承と、すぐれた技術者を育てあげる事を目標に努力を重ねて行ないたいと思います。