第三分野/特定分野の功績
Sadhana Thapa
13歳の頃サダナ・タパさんは故郷の村の周辺に建つ煉瓦工場群が吐き出す煤煙で村人達が呼吸病に苦しむのを見て、環境問題で自分達に何が出来るかを考え、当時増え始めたプラスチック袋が焼却により強力な煤煙、悪臭を放つことに気づき、同級生と『プラスチック袋ゼロ活動』を始めた。子ども達も参加して古新聞などから紙袋を作り、村内の店や家庭に配布してプラスチック袋の不使用を訴えたが、カースト制度に根強く残る女性差別や社会の無理解により、村人から「女が余計なことをしている」などと批判を受け、活動は強制的に中止させられた。
この失敗を糧に、通学先の学校にエコ・クラブを設立し、『1校・1遺産保存運動』を提唱した。この運動は世界遺産の古都バクタプール周辺に残る各文化遺産を周辺校がそれぞれ担当して清掃や参拝客の整理などを行うもので、参加校も増え、若者や地域住民も参加する大きな運動に発展し、地元でも評価されて現在も続いている。
2001年、積極的な活動が環境省に認められ、サダナさんは『第3回こどもエコクラブ・アジア・太平洋会議』にネパール人学生を代表して参加し、ネパールの河川汚染問題について発表し司会も務めた。会議を通して、自然環境体系の大切さを痛感したサダナさんは帰国後、会議で学んだことを政府刊行の子供向け雑誌、新聞などで発表し、エコ・クラブで、(1)グリーン活動、(2)クリーン活動、(3)リサイクル&ユース活動の3つの活動を立ち上げ、荒廃地への植林、古紙や食用油の再利用などを積極的に行った。活動はモデルケースとして他校のエコ・クラブにも広がった。翌年、女性環境保全委員会に参加して環境保全について更に知識を深めると共に、学業の傍らエコ・カウンセラーとして子ども達に環境保全の大切さを伝えるなど、活動の幅を広げている。
2004年、同国で古くから栽培されている環境植物・ケナフを、環境、教育、産業の3分野で活用することに取り組み、世界初の“子ども環境ケナフ会議”を開催して大成功を収めた。現在、NGO「ネパールケナフ開発」を設立し、環境科学技術省とケナフを使った環境・教育・産業支援活動に取り組んでいる。
受賞の言葉
今回の受賞は、私にとり大きな励みとなりました。大きな組織のこのような名誉ある賞を受けたのは、私のこれまでの人生で初めてのことです。私は日本を訪問する素晴らしい機会、そして、さまざま分野の有識者の方々と交流する機会さえも与えていただきました。
常陸宮殿下が私にお声をかけてくださり、授賞式終了後には、私の意見に熱心に耳を傾けてくださったことに非常に感激しております。私の活動を高く評価して頂いたことを大変嬉しく思っております。私にとってだけでなく、ネパールで福祉活動に携わっている若者にとっても大きな励みとなります。これが受賞から得られる最も重要な面であると考えています。女性が社会分野の活動に参加することは、ネパールではあまり評価されていません。最後になりますが、この賞は私の人生にとり最高のものであり、私が今後進むべき新たな道を開拓してくれることでしょう。