平成16年度 社会貢献者表彰
第三分野/特定分野の功績
海の貢献賞
いとう きゅうすけ
伊東 久助
(大5.8.12生 88歳/千葉県館山市)
小学校卒業以来たたき上げてきた網漁師としての豊富で優れた経験により、請われて東京水産大学技官となり、授業・実習や氏の考案になるユニークな模型網で学生を指導して、漁業に貢献した。また海外協力事業にも参加して国際貢献に努められた。
推薦者:加藤 都子
大正 5年に千葉県館山市の漁師の家に生まれた伊東さんは、小学校卒業後すぐに実家の漁業(五智網、見突き漁など)に携わり、戦後は主に館山湾で旋網(まきあみ)漁業に従事する傍ら、北方海域等でマス延縄、サンマ棒受網、サケ・マス流し網にも従事した「生れつきの漁師」だった。
昭和36年、伊東さんの評判を聞いた東京水産大学の教授に声を掛けられ、旋網船の漁勞長を辞して同大学技術専門官に就任した。大学では授業、実習を通じて学生達に漁業技術を伝授しながら、実験用模型網を製作した。それらは実操業で使っている漁具の極めて正確なミニチュアであり、部品の一つ一つを創意工夫し、自作した。伊東さんの実験模型網と、展示模型網は現在、博物館や大学、水産高校等にも寄贈され教育・研究用として展示・活用されている。「漁師でない陸の人にも知ってもらいたい、学校の先生が教えるのとは違う方法で、"体からにじみでるもの"を伝えたい、そんな思いで模型網を作っている」と伊東さんは言う。昭和53年には国際協力事業団の派遣で魚類の資源量調査とその適正利用法および増養殖の可能性を検討する専門家としてエジプトに赴いた。定年退官後も館山で実習をする学生達に網の作り方や漁業技術を指導している。「生まれつき漁師」としての伊東さんの多年にわたる様々な経験が、日本漁業を担う後輩達の指導に活かされ、我国漁業の明日に貢献している。
受賞の言葉
海で生きてきた永かった人生、望まれて行なって来た、数々の事柄が認められ、思っても見なかった素晴らしい賞を頂いて、関係者の皆様にお礼を申し上げます。老いて初めて日の目を見た思いです。
生ある内は学生達と私に出来る話相手を続け度いと思って居ります。