株式会社 ヒューマン・コメディ
2015年に三宅晶子さんが創設し、刑務所や少年院向けの専用求人雑誌「Chance(チャンス)!!」を発行する株式会社。三宅さんは「誰かの人生の背中を押せるような仕事がしたい」と思い、生きづらさを抱える人たちの実情を知るため、少年少女が入所する自立支援施設や受刑者支援の団体等でボランティアを行った。その中で、非行歴や犯罪歴がある人の社会復帰が困難な現状を知った。ボランティア先で親しくなり、後に少年院送致となった少女の身元引受人として親代わりとなったことをきっかけに、少年院・刑務所を出た人たちの社会復帰や生き直し支援のための会社を設立。その後「Chance!!」を発行することを思いつく。「Chance!!」は年4回3,900部発行。上質紙カラー印刷で約60ページ、漢字にすべてルビをふっている。全国の少年院、刑務所、拘置所等、約1,100ヵ所に送付する。これまでの応募総数は1,500件以上、内定者260名、定着率は半年以上49%(1年以上30%)。2022年3月から「教育支援」の講座を前橋刑務所で開始した。視点や物事の捉え方を変えることで人生を生きやすくするといった、社会復帰に向けての第一歩となる内容となっている。
これまでの活動で感じていること
2018年に少年院・刑務所専用求人誌『Chance!!』を創刊してから5年。これまで1,500件以上の応募があり、260人の方が採用となりました。
非行歴や犯罪歴のある人に限ったことではありませんが、雇ってもらったことに恩義を感じて一生懸命働く人がいる一方、人間関係がうまくいかずに辞める人や、不平不満ばかりで地道に働こうとしない人、ある日突然行方不明になる人がいます。
当社では掲載を希望する企業と面談を行い「この会社は社員を大切にしていない」と感じたら、当社からお断りさせて頂いております。そのようにして最低限の環境を整えても、物事の見方や捉え方が逮捕前と変わらなければ、同じことを繰り返すリスクは高いと言えると思います。
また、メディアによる様々な事件の報道を見ていて、社会全体が加害者を「罰したい」欲が非常に高いことを感じます。私自身も、非道な事件の最初の報道を目にしたときは「ゆるしがたい」という怒りを覚えます。けれども、失敗や間違いをゆるさずに排除しようとする社会は、健全な社会といえるのでしょうか。
そもそも、犯罪の背景には、往々にして貧困や虐待といった社会課題があります。「自業自得」では済まない背景がある場合が少なくないのです。このことを知ってから「何があってこのような犯罪となったのだろう?」「自分がこの加害者として生まれ育ったら、どうだったろう?」と、常に想像するようにしています。
そして「ゆるしがたい」という怒りが強いときほど、「自分はいま犯罪をせずに生活できていることに対し、感謝できているだろうか?」と自問するようにしています。自分の努力だけでいまの生活があるわけではないからです。
今後の活動の展開
彼らが生き方を学ぶ機会を増やすと同時に、社会での想像力と感謝を増やしたい。そして、失敗や間違いを受けとめ、生き直すための選択肢のある、やさしい社会にしたい。そんな思いから、本年3月、当社とは別に「一般社団法人ヒューマン・コメディ」を設立しました。本人の学びと社会への啓発を目的としています。
当社で『Chance!!』の掲載企業を全国に増やしていく一方で、一般社団法人ではすでに前橋刑務所でおこなっているプログラムを、さらに展開させる予定です。また、一般の方に対する講演にも力を入れていきたいと考えています。
代表取締役 三宅 晶子