NPO法人 丹波漆
丹波漆の復興を目的に、国内産漆の生産量を増やすこと、漆の樹の植栽や漆掻き職人をめざす後継者の育成に取り組んでいる。丹波漆の歴史は古く、江戸時代には福知山藩の重点作物のひとつとして漆の木が管理されるほど、地域にとって大きな収入源となる重要な産品だった。特に夜久野地域は漆の集積地として繁栄。しかし戦後は、合成樹脂塗料の普及、海外の安価な漆が輸入されるようになり、国産漆は衰退していった。1986年に丹波漆生産組合が発足。2012年現在のNPO法人丹波漆へ組織改正した。国産漆の生産は、掻き子と呼ばれる個人が、植栽された漆の木を購入して漆を採取するが、同法人では漆樹を苗作りから植栽→育成→漆掻きを継続して行っている。苗木から漆を採取できるまでには約10年かかるが、その間植栽地は鹿や猪などの獣害防止柵の維持、下草刈りや害虫の防除をする。毎年、漆植栽会にボランティア約40名が参加、市民や小・中・高校生の漆掻き見学や体験会、さらには講演や出前授業などを通して、漆文化や漆掻きの教育、啓発活動を実践。日本の漆文化の継承と発展、環境保全活動を続けている。
この度は、NPO法人丹波漆の活動に対して社会貢献者表彰受賞の機会に恵まれ、たいへん身の引き締まる思いです。
私たちの活動のミッション(使命、目的)はNPO設立時から以下の3つを掲げています。
・国産漆の社会的ニーズに応える
・後継者(漆掻き職人)を増やす
・文化の価値を発信する
漆は日本の代表的な伝統文化として、工芸品や文化財の建造物の塗装などに活かされています。歴史を辿るとき、縄文時代の遺跡からも漆を使ったものが出土します。一万年以上の時を経て日本人の生活に活かされ残ってきた技術は文明が進んだ今でも、自然の一部である生身の人間には必要なものです。
その文化を守るためには、原材料として、ウルシの樹から漆液を採取することが必要です。その採取技術のことを「漆掻き」といいます。近畿で唯一その技術が残り、漆掻き職人の技術の伝承が残っているのが、京都府福知山市夜久野町です。ウルシの樹に1本ずつ傷をつけて漆液を採取する地道な技術は、今の時代には気を抜くとすぐに無くなってしまうような技術です。
漆掻きの技術を守るためには、まずその若い後継者が、技術を実践するためのウルシの樹が必要です。苗木から漆液を採取できるようになるまでには、10年以上の歳月がかかります。その間には、植栽地を守るために鹿や猪などの獣害防止柵の維持、下草刈りや害虫の駆除といった日々の作業が欠かせません。
自然相手の活動は、日々試行錯誤の連続です。近年の環境の変化や地域の少子化や高齢化の中で、いかにその地域に根ざしてきた伝統文化を守っていくのか、それに取り組んでいる若者が安心して文化を守ることに取り組めるかが、これからの伝統文化を継承していくための課題だと感じています。
また、自然環境の問題が取り沙汰されている現在、地域を守り、活かしていく手段としてもウルシの樹を植え、育てる活動自体も大切な役割を担い始めています。
この場をお借りして、当NPOに理解を持って支援してくださっている皆様への感謝をお伝えすると共に、丹波漆生産組合時代の漆掻き職人達の地域に根差した技術を守り、伝えて行きたいという連綿と続いてきた思いを大切に、引き続き、今後も活動を続けていきたいと思います。
受賞に際し、現場で苦労をしてきた仲間と喜びを分かち合うことができました。また、私達の活動においてたいへん励みになり、応援してくださっている皆様にも、私達の活動をあらためてご報告できる良い機会になりました。ありがとうございました。
理事長 髙橋 治子