NPO法人 グラウンドワーク三島
渡辺 豊博
1992年、ふるさとの環境悪化に問題意識をもった市内8つの市民団体が、「水の都・三島」の水辺自然環境の再生と復活を目指して結束し、グラウンドワーク三島実行委員会を発足。日本で初めて英国発祥の「グラウンドワーク」の手法を導入して市内を中心に70か所以上で環境再生、地域再生、農業再生などに取り組んでいる。1999年にNPO法人の認証を受け、現在では20の市民団体が連携している。グラウンドワークとは、1980年代に英国で始まった実践的な環境改善活動で、住民、行政、企業がパートナーシップを組み、グラウンド(生活の現場)に関するワーク(創造活動)を行うことにより、自然環境や地域社会を整備・改善していく活動である。企業と行政は資金、人材、土地などを支援し、住民側がボランティア活動による労力を提供することで、課題を解決していく仕組み。30年に及ぶ活動により、市内を流れる源兵衛川は本来の清らかな流れを取り戻し、農作物は豊かに育ち、結果、観光業や移住者が増え、シャッター街が消え、魅力ある街づくりの礎となった。
多様な関係者を束ね、「水の都・三島」を再生
本会は、1992年から30年間にわたり、複雑に絡み合った困難な地域課題を解決すべく、バラバラに活動して、利害が対立する市民・NPO・行政・企業間の調整・仲介役となり、環境改善活動をリードし、相互にメリットが甘受できる共存共栄の新たな「地域協働」の仕組みづくりと、具体的な現場モデル・実践地を蓄積してきた。
この「課題解決力」のエンジンは、本会に参画する20の市民団体が一体化した「市民ネットワーク」の力であり、その多種多様な市民力・地域力を束ねる中間支援組織としての「コーディネート・マネジメント」の力である。
活動の成果は、ドブ川と化していた「源兵衛川」を、ホタルが乱舞し、子どもたちが水遊びに興ずる、安心・安全な水辺空間に創り上げた環境再生活動である。幅広い市民団体や行政、企業の力を束ねることにより、25年以上にわたる環境悪化の状況から川を蘇らせ、新たな水辺景観の再生に成功した。
また、静岡県の天然記念物である水中花・三島梅花藻を保護するための増殖基地である「三島梅花藻の里」を造成し、地域住民の地道な維持管理体制を構築して再生・復活させた。今では年間約20万人が訪れる三島を代表する「観光スポット」にもなっている。このように、現在までに三島市内に70か所において、市民力と現場力を結集した「三島磨き」を実践してきている。
さらなる発展的・創造的、社会貢献活動に挑戦
「水の都・三島」には、今後のまちづくりで活用できる、多様な地域資源・環境資源・文化歴史資源・景観資源などが埋もれており、その潜在力と発展性は無限といえる。
それらの資源・宝物を、専門家や企業のアイデアを集めた、多方面の活動により付加価値を増幅させて、地域環境と生態環境とが調和・共存できる事業を実現化させていく。
2020年5月に実施された市民アンケートでは92%が「三島は住みやすい」と答え、満足度は前回4位だった「公園・水辺空間の整備」が2位に浮上した。密にならない疎の水辺自然環境の優位性が居住環境の価値として評価されたものだと考えている。
今回の受賞は、ふるさとを愛する多くの人々による、長い間の草の根による市民運動の成果といえる。受賞を継続性の強い励みと原動力に活用しながら「議論よりアクション」の信念のもと、幸せで美しい生活環境を創り上げていく覚悟である。
専務理事 渡辺 豊博