Paix²
Paix²(ぺぺ)は2000年に歌手デビューした井勝めぐみさんと北尾真奈美さんのデュオ。二人の出身地、鳥取県の地元警察署の一日署長を務めたことをきっかけに刑務所や少年院などの矯正施設で「Prisonコンサート」と称したボランティア活動を開始。2020年2月14日の京都刑務所での公演で503回を数えた。北海道から沖縄まで日本全国を音響機材と共に車で移動し、機材の設置からコンサート終了後は機材の撤去まですべて自ら行う。当初はじっと舞台を見つめる受刑者に様子に戸惑いの連続で、舞台の上で思わず凍り付いたこともあった。様々な制約のある刑務所でのコンサートでは観客である受刑者に原則として認められているのは拍手のみ。しかしながら、回を重ねることにPaix²ならでは、代表曲「元気だせよ」の歌詞に載せて拳を突き上げるポーズを認める刑務所が増えている。二人は被害者の心情を常に考え、ステージでは二度と罪を犯さないように語り掛け、20年にも及ぶ活動を通じ、「継続していくことの大切さ」を受刑者に伝えている。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で刑務所を訪れることができなくなったが「居室配信型Prisonコンサート」のDVDを制作して全国の矯正施設に配信している。
【心のスイッチ】
2000年4月に、私たちはPaix²(ぺぺ)という歌手名でデビュー致しました。
歌手になった以上、何か継続して出来ることはないだろうかと模索していたとき、ふるさとの鳥取県倉吉警察署の署長さんから、「鳥取刑務所で歌ってみたらどうだろうか」と提案してくださいました。
その一言から私たちの刑務所コンサートは始まりました。
刑務所という特殊な場所ですから実施までには様々な制約があります。
情報管理やセキュリティーに神経を尖らせている施設ですから「はいそうですか」と許可は出ないのです。
私たちが日本海テレビジョンに毎週出演していたこともあり、鳥取刑務所の職員の皆さんが顔を知ってくださっていたことが幸いして…「是非お願いします。」と最初のコンサートが決まりました。
矯正施設(刑務所・少年院)での活動を始めて間もない頃、まだ若い女性歌手が刑務所でコンサートをするという事が珍しかったのだと思います。鳥取刑務所で実施したことが各地の刑務所に伝わりました。
そして、徐々に依頼が舞い込むようになり、いつの間にかその回数は500回を超えました。
全国の矯正施設でコンサートツアーを継続してゆこう、そう決めたときにみんなで約束したことがあります。
それは『お金が無いからと言って途中で止めない』という事です。
刑務所への、移動手段は網走から鹿児島までは原則として車です。
重い音響機材一式を積んでマネージャーと3人での移動です。
少ない営業活動で蓄えては、依頼された刑務所・少年院に向かいました。
お金がなくて高速道路を走ることが出来ず、一般道をひたすら長距離を走ったこともありました。
長い間留守をして帰宅したら電気もガスも止められていたことも・・・
今振り返れば笑えるエピソードですが、不思議と、苦しいから止めようかと思ったことは一度もありませんでした。
矯正施設でのコンサートは概ね体育館で行われます。
殺風景な体育館に整然と並んだ空間には、静寂と熱気と後悔が渦巻いています。
それは、会場の皆さんの目から伝わって来るのです。
受刑者の皆さんと、時間と空間の共有をするのですから「心のスイッチを押したい」その一念です。
塀の中にいらっしゃる皆さんは一般社会のように情報が沢山あるわけではありません。
一言一句逃すまいと何百人もの目が舞台に向けられています。
人の心が動くのはどんな瞬間なのか…メッセージコンサートは舞台と客席の真剣勝負です。
音楽で人の心が動く…その瞬間が少しずつ解るようになりました。
人にはそれぞれ心の中に感情のスイッチがあります。
客席いる皆さんが涙を流す瞬間をたくさん見てきました。
その涙こそ、心のリメイクの瞬間ではないかと私たちは感じています。
私たちのコンサートからたった一人でも良いのです。
『本当の幸せとは足元にあったんだ』と気が付いて貰うことが出来るなら…
決して有名でもなく、資金があるわけでもありません。
塀の中の皆さんから拍手というエールをたくさん頂いたからこそ、今日まで歩いて来れたのでしょう。
大変なご苦労をされながら、社会貢献活動をされている方々が沢山いらっしゃる中、このような立派な賞に選んで頂きました事を心より感謝申し上げます。
頂きましたこの賞に恥じない様、これからも活動を継続して頑張って参りたいと思います。
本当にありがとうございました。
大変なことは数限りなくありましたが、神様は見ている。
「苦労は必ず報われるんだ・・・」と思うことが出来ました。
Paix²(ぺぺ) 井勝めぐみ ・ 北尾真奈美 【共著】