2020年度 受賞者訪問記
2020年、突如世界を襲ったコロナ禍。この地球規模の危機的状況の中、休むことなく活動を続けていらっしゃる受賞者のみなさんのもとを、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の合間を縫い、感染予防に十分留意したうえで訪れました。
1. 福岡県田川市 NPO法人 田川ふれあい義塾 訪問
第54回社会貢献者表彰式典の奨励賞を贈呈の為、NPO法人田川ふれあい義塾が今年4月に設立した、更生施設で生活する少年少女の為の就労準備支援のカフェを訪問。
副賞の賞金は、カフェの内装工事及び備品の購入費用に使われるとのこと。駅前の商店街の一角にひときわ目立つおしゃれなカフェで、既に遠方からも来るほどの評判になっているそうで、頂いたバナナジュースの味は絶品でした。
更生を目指す若者が就労前の社会生活を身に着ける場所として、また、田川ふれあい義塾の収益となるカフェになることを願っています。
2. 千葉県 小早川 明子 様
千葉の房総半島にある独立行政法人国立病院機構下総医療センターの薬物依存治療部部長の平井愼二医師を、社会貢献者表彰の受賞者で、ストーカー行為を行う人に対し、辞めさせるための活動を行う、小早川明子さんと訪問しました。
小早川さんが、「どうしたらストーカー行為を辞めさせられるのか」困り果てていた時に、治療できると言ってくださったのが平井医師です。執着に対して、条件反射制御法という治療を行うことで、その依存を克服できることについての説明を受けました。
人の脳は、本来生まれ持った動物的思考脳と、教育や経験から培う人間的な理性の脳があり、これまで依存対応には、それをしてはダメ、とか、迷惑をかける、家族が悲しむ、友達が離れていく、嫌われるといった理性の脳に働きかける手法。しかし本来依存症はパブロフの犬の様に、薬物依存は注射針や白い粉を見ただけで興奮状態となる、動物的脳の働きによるものなので、それを抑えるには、そのプロセスを踏んでも高揚感は得られないということを体感するのが一番だという説明でした。
この治療により、これまでの執着が嘘のように無くなったという人も数多く、ストーカー行為がやめられない人にとってこんな朗報はありません。平井医師との出会いは、小早川さんにとって、なにより活動を推し進める自信に繋がったようです。
3. 兵庫県神戸市 認定NPO法人女性と子ども支援センター ウィメンズネットこうべ
第55回社会貢献者表彰の奨励賞を贈呈する為、兵庫県にある、同団体を訪問しました。
DVから逃げた女性や子供を保護し、社会復帰まで見守り、寄り添う団体です。DVは家庭内の問題で、行政や他人が介入することではないといった風潮がまだまだ日本には根強く、支援が得られづらいジャンルの活動だそうです。
当日は食品の配布日でもあり、総勢13名の利用者とボランティアの方々が迎えてくださいました。DVにあっていた頃の話や、そこからどのような心の変化で、どうのようにして今日までたどり着いたのか等の話を伺いました。コロナ禍でさらに女性を取り巻く環境が悪化しているそうです。
代表の正井さんからは、台湾に比べて日本がいかに女性の権利や保護の体制に遅れをとっているか、平均年収でみてもシングルファーザーが400万、夫婦共働きは600万円に対して、シングルマザーは200万という格差があり、正社員になれず、待遇面でも将来の希望がみられない状態だといいます。
また、家庭内暴力の場合、夫はそのまま住み続け、仕事も変わらないのに、被害者である妻や子は、家を追われ、仕事を辞め、学校にも行けない等、心の傷に加えて、環境面での大きな変化と貧困という三重苦に苛まれることになる。行政のシェルターは、多くの制約と滞在期間が短いことから、結果仕方なくものとのDV夫の元へ戻る人が半数以上だそうです。
利用者はこの団体に出会わなければ、今生きていたかどうかもわからないと涙ながらに語っていました。
正井代表は、民間シェルターは、柔軟で、長いスパン併走することができる、社会にとってなくてはならない存在だと強調されていました。
DVは全世界共通、生活レベルや年齢に関係なく、閉鎖的な中で起こっている問題です。個々の家庭内の問題と捉えず、問題を抱えている人に避難場所を用意することで、女性や子どもには心の平和が訪れリスタートに繋がります。
4. 沖縄県那覇市 チョチョカイ・トウヤソウ夫妻
混とんとするミャンマー情勢のもと、ミャンマーにて私立愛の学校を運営するために、那覇市内でミャンマーレストランを営むご夫妻に、その後の学校の運営状況と、ミャンマーに関してのお話をする為、那覇市のチョチョカイ・トウヤソウ夫妻を訪問しました。
チョチョカイ夫妻は一昨年5月にミャンマーに帰国しましたが、コロナで日本への飛行機が飛ばず、ようやく11月に再入国でき、幸い現地の学校の運営は続いていて、レストランの来店者数も学校の運営費を捻出できる程にはなっているとの話を伺いました。
チョチョカイさんはミャンマー日本(沖縄)留学生会の会長も務めており、ミャンマー情勢について、海外にいるミャンマー人に何かできることを共に考える時間を持ちました。
5. 沖縄県那覇市 特定非営利活動法人おきなわCAPセンター
設立から27年を迎える同団体は、コロナ禍で主流であるワークショップがなかなかできない状況で、通常年約120回の開催が2020年は70回しか開催できなかったそうですが、行政の依頼もあり、今は孤立する子どもたちにLINEでの相談も始めています。
沖縄は若年層の結婚による離婚、シングルマザーや生活保護受給者の割合が全国一高く、子どもへの虐待や暴力も多いそうです。暴力を受けた子どもは、成人になってもトラウマを抱えて、社会人になってもその影響を抱えたまま、成功体験や自己肯定感を持たずに育ってしまうことで、社会にうまく溶け込めないなど、その影響は大きいのが実情です。
そのような中、CAPの行う、子どもの権利について知るワークショップは、子供達にとって大変重要で貴重な経験となります。
6. 沖縄県 砂川 元 口腔外科医師
第54回社会貢献者表彰の受賞者である砂川医師は、ラオスのJICAが建てたセタティラート病院に出向き、国内全土から集まる口唇口蓋裂患者に対して、これまでに400例以上、無料で手術を行ってこられました。毎回1週間ほど現地に滞在し、そこに集まる患者の旅費も負担しておられるそうです。
ラオスはインドシナで一番貧しい国で、口蓋裂は500人に1人生まれます。日本では新生児のうちに手術するのが一般的ですが、ラオスでは成人しても手術を受けられずにいる人もいます。これまでの活動についてスライドを元に説明を受けました。自分の口からものを入れ、噛み、栄養にして生きていくことの重要性を強く訴えられました。
今回の受賞は、これまでの功績に対するご褒美だと大変喜んで下さいました。
訪問を終えて
未だ新型コロナウイルスの脅威にさらされている毎日ですが、さまざまな社会課題は立ち止まってはくれません。
緊急事態宣言等で活動もままならず、運営の継続すら危ぶまれている受賞者さんも数多くいらっしゃいます。
一日も早いコロナ禍の収束を願いつつ、日々活動を続けられている受賞者の方々に思いを寄せていきたいと思います。