社会貢献の功績
清田 悠代
心臓病の弟がいた経験から、病気の子どもに面会する親を、病院の廊下でひとりじっと待つ“きょうだいたち”にも心のケアが必要と感じ、日本ではまだあまり注目されていなかった、“きょうだい”を癒す活動に取り組んでいる。米国では病気や障がい等、特別なニーズを持つ子どもの“きょうだい”のケアが日常的に行われている中、日本ではまだ、そういった子どもたちは置きざりにされているのが現状。病気を患う子ども、その“きょうだい”、親、みんながそれぞれに家族に申し訳ない気持ちを持ち、遠慮し気を使っている。子ども時代の経験が性格にも影響を及ぼし、大人になっても心に傷を抱え、自己肯定感が低かったり、生きづらさを感じて精神科にかかるなど、更なる問題を発生させることもある。
清田さんは、「NPO法人しぶたね」を立ち上げ、病院で“きょうだい”と過ごしたり、彼らが主役になり親やボランティアとあそぶイベント、支援者に向けた研修や講演などを行っている。
このたびは身に余る大きな賞を賜りありがとうございます。前日の懇談会や授賞式を通してすばらしい方々のご活動を知り、熱い心を持ちながらも柔らかい物腰のみなさまとお話できたこと、宝物の経験になりました。
中学生の時に弟が入院する病院で見た光景が、私の今歩く道を決めました。感染予防のために病棟に入れない小さなきょうだいたちは、保護者の方が入院中のお子さんに面会される間ずっと、何もない廊下にぽつんと座り、何時間も過ごしています。2、3歳の女の子が母親を求め泣きながら、それでも病棟と廊下を隔てる扉の先に行ってはいけないことを理解しているので扉を開けようとはせず、ただ泣きながらじっと張り付いていました。こんな小さな子が泣いているのに誰にも声をかけられることもない現実にふれ、中学生の私は大きなショックを受けました。その気持ちから、大学では社会福祉を学び、きょうだい支援先進国である米国で広く開催されているきょうだいのためのワークショップを日本でも行うため、2003年ボランティアグループ「しぶたね」を立ち上げました(2016年NPO法人格取得)。病気の子どものきょうだいたちが主役になり、仲間と出会い、大歓迎され、安心の空気の中であそびきること。背伸びをして大人みたいになって頑張っているきょうだいたちが、楽しくあそぶ中でふとかかとをおろして等身大の子どもに戻っている瞬間を増やしていくこと。そんな場を目指して、たくさんの人が力を貸してくれました。病院の廊下の活動では、11年で延べ900人以上のきょうだいとあそぶことができました。
きょうだいたちが抱える不安や寂しさ、自責感、プレッシャーなどは大人になってからの性格や人生観にも大きく影響しますが、子ども時代を安心の中で過ごした経験が生きづらさの軽減につながること、きょうだいに出会う人はみなきょうだいの支えになれることを、大きくなったきょうだいたちが教えてくれています。
病気の子どもの親御さんは、24時間365日休みなく病気の子どもの命を守りながらきょうだいにも心を配り頑張っておられます。その親御さんを見ておられる支援者の方々もきょうだいのケアについて一緒に悩んでおり、そんな方々の要請を受けて、これまでの経験やノウハウをお伝えする研修ワークショップ事業を昨年から始めました。全国にきょうだい支援のたねを蒔いていきます。
受賞された方々のご活動をうかがい、つらいことが起こってもきっと誰か支えてくれる人がいる心強さを感じました。家族が病気になっても自分らしい人生を送ることが当たり前に守られる社会になるように、私も自分の人生の時間をきょうだいたちの安心のために使いたいと思います。ありがとうございました。