社会貢献の功績
岡本 昌宏
神奈川県横須賀市で2004年から児童養護施設や少年院等を退所後、受け入れ先のない青少年を、自身の会社(とび職)で雇用してきた。しかし、受け入れた青少年の多くが入社から2年の間に離職しており、その原因は「仕事の理想と現実とのギャップ」にあると考え、とび職以外の職場を体験できるよう選択肢を増やし、学習支援なども加えて多方面から自立を支える体制を整え、2016年に「NPO法人なんとかなる(以下、なんとかなる)」を設立した。「なんとかなる」では寮母さんのいるシェアハウスを運営し、衣食住を提供して職業訓練や学習支援を行い、施設利用終了後も継続的に支援を続けている。現在、児童相談所一時保護所、少年院、鑑別所、刑務所等から9名継続中。
私は13年前に土木・建築工事を行うセリエコーポレーションを設立しました。そして児童養護施設・少年院・刑務所を出た人たちを積極的に雇用し、社会復帰までのサポートを行ってきました。これまでに、「鳶職の仕事・住まい・親代わり」の3点セットで支援した人数は60名以上にのぼります。
鳶職は重労働なだけでなくとても厳しい仕事です。しかし一度手に職をつければ、安定した収入に結びつきます。努力し継続すれば、必ず実を結ぶ仕事です。
私は出所した人たちにこう伝えてきました。「罪を忘れてはならない。しかし償ったら誰でも同じようにチャンスがある。そして手に職があれば、どこへ行ってもやっていける。頑張れば社長にだってなれる」と。
しかし支援の道のりは、決して平坦なものではありませんでした。一旦は受け入れたものの、仕事がきつくて長続きせず、継続支援できなかったケースが数多くありました。またスマホが普及した社会で、「短時間で高収入」の言葉を安易に信じ、振り込め詐欺等の再犯に至るケースが後を絶ちませんでした。私は鳶職だけにとらわれてはいけないと考えました。
そこで、さまざまな職業の可能性を模索しながら個々に合った仕事を探し、同時に生活面の支援も行えればと、2016年NPO法人なんとかなるを設立し、「鳶職だけではない仕事・住まい・親代わり」の3点セットを提供するシェアハウス5カ所を運営するに至っております。
NPO法人なんとかなるでは、鳶職が合わなくてもシェアハウスに住んだまま、別の職場を体験できる仕組みづくりを進め、介護施設・不動産会社等に受け入れてもらう体制づくりを整えました。またIT企業、飲食店等の協力も得られ、3日から半年間、本人が納得のいくまで職場体験のできるシステムを作りました。そして本人が合わせられる仕事が見つかり雇用に至れば、シェアハウスに移る流れをイメージし、中間支援施設の運営を開始しました。中間支援施設では、調理スタッフと寮母が皆の生活を支えています。そこでは、職業の選択肢を増やせるよう、元教師らがパソコンを教える学習支援面のサポート体制も兼ね備えるなど、その人らしさを大切にした支援を行っています。
さらに2018年には、児童養護施設を退所した子どもたちの社会的養護を担う「自立援助ホーム」の運営を行います。
まだまだ試行錯誤は続いていますが、児童養護施設・少年院・刑務所等を出た人たちに対し、切れ目なく淀みのない社会的システムを作っていきたいと、私自身、日々努力邁進しております。サポートに係わった人たちが心を込めて支援することが、再犯を防ぐだけでなく、本人のよりよい幸せにつながると信じています。
このたびは大変栄誉ある賞をいただき、本当にありがとうございました。これからも、偏見なく誰もが住みよい社会づくりに貢献してまいります。
日々ご安全に!!