受賞者紹介

第47回 社会貢献者表彰

社会貢献の功績

ぎふけんりつぎふこうとうがっこう しぜんかがくぶ せいぶつはん

岐阜県立岐阜高等学校 自然科学部 生物班

(岐阜県)
岐阜県立岐阜高等学校 自然科学部 生物班 神戸 朱琉
岐阜高校 神戸 朱琉

野生生物の保全に関する対策や、生理学及び生態学の研究に日頃から積極的に取り組んでいる。平成8年に顧問の高木教諭が、全国的にも希少なカスミサンショウウオを岐阜市内で確認し、平成18年から自然科学部生物班として岐阜市や岐阜大学等の研究機関と連携し、保全対策を進めている。保全対策としては、卵のうの保護及び飼育、生息地への放流等を行っている。生息地で確認された卵のうは平成19年には、6対ほどであったが、平成28年までに個体の放流を行い、平成28年には、過去最高の58.5対の卵のうが確認されるまでになった。生息地が市内に1ヶ所しかなく、環境変化による消失を懸念し、平成20年からは、2ヵ所の生息域外保全地にも放流を行っており、自然繁殖していることが確認されて、経過は順調である。保全対策以外に研究発表や地域住民を交えた放流イベント等周知啓発の活動にも力をいれている。

推薦者:岐阜市長 細江 茂光
地域の方々と協力して生息地の整備
地域の方々と協力して生息地の整備

この度は、このような素晴らしい賞に本校自然科学部生物班が選ばれたことを誠に光栄に思います。

岐阜高等学校自然科学部生物班は、部活動の一環として10年間カスミサンショウウオの保護活動を行ってきました。カスミサンショウウオは全国的にも希少な生物で、岐阜県内に生息地は3か所しか存在しません。その中でも岐阜市の生息地は、活動開始当初の調査で卵のうが6対のみしか発見されず、大変危機的な状況にありました。そのため私たちは、生息地の環境整備、卵のうの保護、幼生の飼育、生体の放流といった保全活動を毎年継続して行い、生息地の再生に努めています。その結果、平成28年には58対の卵のうが確認されるなど、活動の成果が順調に表れています。平成20年からは、環境変化などによる絶滅のリスクを分散させるために、生息地の他に2か所の生息域外保全地への放流を、岐阜市や岐阜大学と連携して行っています。2か所の保全地で共に自然繁殖が確認されており、カスミサンショウウオが順調に定着しつつあります。

また、長年の保全活動を通して得たデータをもとに、大学等の研究機関と協力し、岐阜市のカスミサンショウウオの生態や遺伝的多様性を研究しています。そして、その成果を保全活動にフィードバックすることで、より適切な保全を模索しています。これらの研究や保全活動の成果は、学会や地域の様々なイベントで発表し、カスミサンショウウオ保護の周知啓発活動を行っています。

授賞式では、すばらしい賞を頂いただけではなく、さまざまな形で社会に貢献されている方々にお話を伺うことができ、とても有意義な時間となりました。どの受賞者の方も根気のいる活動を非常に長期間続けておられ、その苦労や強い信念をお聞きして、改めて活動を継続することの難しさと重要さを実感しました。また、私たちと同じように自然環境保護に携わっておられる方も多数いらっしゃり、今後の保全活動の大きな指針を得ることができました。表彰式典では大勢の方々の前で本活動が表彰され、誇らしく思うとともに、人知れず絶滅の危機に瀕しているカスミサンショウウオという小さな生き物が、この受賞をきっかけにさらに多くの人々に知ってもらえればと感じました。

今回の受賞を活動のさらなる励みといたしまして、今後も保全活動に努めて参ります。

元部長 髙橋 晃太郎

  • 「第69回愛鳥週間 全国野鳥保護のつどい」での活動報告
    「第69回愛鳥週間 全国野鳥保護のつどい」での活動報告
  • カスミサンショウウオのDNA抽出の様子
    カスミサンショウウオのDNA抽出の様子
  • カスミサンショウウオの成体(右下:卵のう)
    カスミサンショウウオの成体(右下:卵のう)
  • カスミサンショウウオの幼生の放流の様子
    カスミサンショウウオの幼生の放流の様子
  • カスミサンショウウオ幼生の世話
    カスミサンショウウオ幼生の世話
  • 地域の子供たちを招いての放流会
    地域の子供たちを招いての放流会
受賞者とみなさまをつなぐプラットフォームプロジェクト「ひとしずく」