受賞者紹介

第47回 社会貢献者表彰

社会貢献の功績

とくていひえいりかつどうほうじん さんごしゃすこーれ

特定非営利活動法人 珊瑚舎スコーレ

(沖縄県)
特定非営利活動法人 珊瑚舎スコーレ 事務局長 遠藤 知子
事務局長 遠藤 知子

代表の星野氏は埼玉県の自由の森学園という、競争に頼らない個性を伸ばす理念を基本に設立された私立中・高学校の校長を長年務め、退任後沖縄に移住し、もう少し小さな学校を作りたいと、2001年にフリースクールとして開校した。ゆくゆくは夜間中学も開校したいと思いっていたが、墨田区の夜間中学のドキュメンタリー番組“こんばんは”の制作に携わった先生から、「沖縄には戦争や貧困で義務教育を受けられなかった高齢者が多くいて、彼らには時間がないから、一刻も早く夜間中学を作ってほしい」と懇願され、2004年に設立を宣言。それが沖縄のテレビやマスコミに取り上げられ、強力な後押しとなって、20名の定員を超える応募があった。そこからこれまで14年間、戦中戦後に学齢期だった60.80歳を中心に、156人が入学し71人が卒業し、1/4は高校に進学している。毎週月曜日から金曜日、午後6時から9時まで、毎日3時間、9教科を教え、修学旅行もある全国唯一の自主夜間中学。

生活科の授業で刺し子の布巾が出来上がり笑顔の81歳の男子生徒
生活科の授業で刺し子の布巾が出来上がり笑顔の81歳の男子生徒

沖縄の小さな学校から

珊瑚舎スコーレは2001年に沖縄県那覇市に開校したNPOの小さな学校です。当初はアジア・沖縄を学ぶ専門部と高等部からスタートし、今では初等部・中等部も開設しています。夜間中学校は2004に開設し今年で12年目を迎えました。もちろん自主夜間中学校です。ほとんどの自主夜間中学校は識字教育が中心です。ただ珊瑚舎スコーレは授業を「思索と表現と交流の場」と位置付けていますので、夜間中学校も同じコンセプトです。英数理社に音楽、美術、体育、三線(沖縄の三味線)、HRがカリキュラムに組まれており、年2回の学習発表会は昼間部の生徒と共同でおこないます。9歳から83歳までの生徒同士が協力しあいながら行事を作り上げています。

現在の平均年齢は77歳、入学した方は150名を超え、卒業後高校に進学する生徒も少なくありません。毎週月曜日から金曜日、午後6時から9時まで毎日3時間勉強します。初めて手にする鉛筆、辞書です。多くの生徒は沖縄戦で肉親を失い、自らも肉体的、精神的に傷つきながら精一杯生き抜いてきた人々です。学校に一度も足を踏み入れたことのない人もいます。名前が書けない、学校を卒業していないということは、この方々にとり生活が困難であること共に、人間として自信が持てないという2重苦を負うことになりました。「人生でし損なっているのは学校に行くということだけ」「心に刺さっているトゲは学校に通うことでしか癒せない」「鉛筆はドラム缶より重い」いずれも生徒の言葉です。入学当初は役所や病院で名前が書けるようになりたいと切迫した口調で語りますが、半年もするとはっきりとした明るい表情に変化します。勉強への手ごたえを感じるからでしょう。同じ仲間に出会えた安心もあるようです。「自分だけがこんな苦労し、恥さらしの人生と思っていたら、もっと辛い人がいると分かった。第一自分のこれまでをなんにも隠さなくていい。初めて同級生と呼べる人ができた」と語ります。仲間に出会い、それまで心の奥に仕舞い込んでいた様々な感慨を解き放つことができるようになったからでしょう。

学校が知識を競う合う場ではなく、知識を分かち合う交流の場となれば、「学校」という場、学ぶ行為は人にもっと豊かで深いものをもたらすのではないでしょうか。現にある生徒は「たえず学歴ではなく学校に行きたい、学びたいと思い続けてきました。自分は何のために生まれてきたのか。古い価値観を捨てて新しい自分を見つけたい」と語っています。

この言葉は私たちに人はなぜ学ぶのか、なんのために学ぶのかを問いかけています。こうした生徒の言葉に応えられるような「学校」を作り続けていきたいと思っております。

今回、他の受賞者の方々の活動を知る機会を設けて頂き、大変刺激になりました。場は違えども志が同じ方々と実際に顔を合わせて交流できたことは、これからの励みになります。関係者の皆様に感謝申し上げます。

事務局長 遠藤 知子

  • 「ゆんたくあしび」ボランティアの方々に感謝を表すためのパーティー
    「ゆんたくあしび」ボランティアの方々に感謝を表すためのパーティー
  • 英語の授業の様子
    英語の授業の様子
  • 学習発表会での英語の発表の様子
    学習発表会での英語の発表の様子
  • 個人文集の表紙作りの様子
    個人文集の表紙作りの様子
  • 授業前に教え合う生徒の様子
    授業前に教え合う生徒の様子
  • 数学の授業でサポーターの女子高生にアドバイスしてもらう生徒の様子
    数学の授業でサポーターの女子高生にアドバイスしてもらう生徒の様子
受賞者とみなさまをつなぐプラットフォームプロジェクト「ひとしずく」