社会貢献の功績
鬼 一二三
平成7年から世界遺産アンコールワットの玄関口であるカンボジアのシェムリアップ州で日本語教室と図書館の運営をしている。日本語教室は月曜から金曜の朝6時から夜10時まで一時間単位で行われており、初級から商談のための日本語まで22種類と幅広くカリキュラムが組まれている。20日で10ドルの授業料だが、経営は実質赤字。「入学」「卒業」は自由で門戸は大きく開かれており、通学していた生徒の多くはガイドなどの観光業に従事している。ただ言語を教授するのみならず、個別の指導で潜在能力を引き出し、明日のカンボジアを背負って立つ人材の育成も行っている。現在、様々な年齢層、家庭環境を背景に持つ延べ194人の生徒がおり、これまでに2,500人以上が学んでいる。
この度は思いもよらぬ大変立派な賞を頂き、光栄に存じます。19年に亘りカンボジアで続けて参りました地道な活動が多くの皆様の前で賞賛を受ける機会を頂戴し、誠に嬉しい限りで御座います。
長きに亘りご支援下さっている方々に対し、今までは会報をお送りして現状報告をするのみで御座いましたが、この度は式典にお招きする事が出来、支援者の皆様に大変悦んで頂けました。日本に留学中の教え子達も含め、40名もの方々にお越し頂き祝して頂きました。
夢にも思わなかった首相令夫人直々のご授賞、帝国ホテルと言う最高の場へのご招待、これ程素晴らしい式典がありますでしょうか。この様な場に支援者の皆様をお招きする事によって感謝の気持ちをお伝え出来る機会は他には無い事で御座いましょう。
2,500名に上る人々が国際日本文化学園一二三日本語教室で日本語を学んでゆき、そのお蔭で町のあちらこちらで教え子が日本語を使用して堂々と仕事をしている姿を目に致します。誠に遣り甲斐の在る奉仕をさせて頂いていると感じ、感謝の毎日です。日本語教育の普及や図書館の運営をただただ個人レベルで行って参りましたが、此の度、公の場で表彰されましたからには、中途半端に終わらせる事など決して無い様、更に誠心誠意この事業を続けて参ります事をお約束申し上げます。
心苦しい事がただ一つ、副賞を自身の為に使う様にとのお言葉でしたが、そのご指示には沿えそうに御座いません。元来贅沢の出来ない性分なのかも知れません。頂いた副賞は事業遂行の助けと致します事をお赦し下さい。それが結局は後に素晴らしい成果として現れ、金銭では買えない私の大きな喜びとなると信じております。
最後に、式典にカンボジアの未来を背負うであろう教え子達をお招き頂いた事に心より感謝致します。生活費を自ら稼ぎ出しながら熱心に学ぶ留学生達で御座います。皆、人命救助やボランティア活動家を尊敬し、他人の幸せを自分の幸せとする貢献者を称賛しておりました。私は近年、一時帰国の折に格安の航空券ばかり利用しており、物の運搬が困難でしたが、此の度は一般旅行客同様の航空会社の利用及び教え子の同伴により、この機会に式典に参集致しました留学生達全員に山の様なカンボジアの食材のお土産を手渡す事が出来ました。これも偏に財団の皆様の温かいご配慮によるものと心より感謝致します。教え子達は私の受賞を自身の誇りと申しており、改めまして此の度の受賞の波及効果を実感しております。