社会貢献の功績
アナコット カンボジア
代表者の田中千草さんはカンボジア国内で一番のマンモス公立小学校、ワット・ボー小学校で教師として赴任し、校長の顧問という立場で教員の意識改革を行い、その質の高さから評判を呼び同校はカンボジアいちのマンモス校となった。音楽の授業(情操教育)が行なわれていなかったカンボジアで、独自で音楽教科書、カリキュラムを作り、教えている。音楽隊が結成され、来賓訪問の際は演奏することもある。また、田中さんは極度の貧困など家庭に事情のある7歳から16歳までの男女6人を引き取り、生活を共にしている。学校から報酬は受け取っていないため、帰国した際の講演料や預金などで子どもたちとの生活を賄っている。7年にわたる活動。
この度は、長い歴史と伝統、格式のある社会貢献賞を受賞させて頂き、心から厚く御礼申し上げます。審査の際には遠くカンボジアの地にまでお越し頂き、申し訳ない思いで一杯でございましたが、皆様の温かい思いを頂きました今回のこの受賞は、現地のみんなと共に頂いたものと受け止め、さらに活動に邁進して参りたいと存じます。
私は2007年1月よりカンボジア王国シェムリアップ市で教育活動をしています。当初は青年海外協力隊として赴任しましたが、任期の2年が終わる頃、現地の大勢の方から「ここに残ってほしい」という署名を頂きました。一緒に教育を良くしていきたいというみんなの思いがとても嬉しく、また2年ではどうすることもできない状況を何とかしたいという考えもあったため、2009年4月、個人としてカンボジアに戻ることを決心しました。
『アナコット』というのはクメール語で『未来』を意味します。自分たちの未来を自分たちの手でつくりあげていく力をつけてほしいという願いを込めました。カンボジアの子どもたちはまだまだ過酷な環境にありますが、毎日を生きるために真剣に生き、輝く瞳と最高の笑顔を持っています。そんな子どもたちから、私の方がたくさんのことを学ばせてもらう日々です。しかし、子どもたちが未来に夢と希望をもって歩いていくには、『貧困』という問題を越えなくてはいけないことを目の当たりにしました。『物質的な貧困』は勿論ですが、それは、『知識の貧困』『精神的・道徳的な貧困』によるところが大きいと感じています。そして、これらの問題と向き合うには、やはり教育が重要であると考えました。
現在は、現地の先生方と共に教育の改善を図り、日々話し合いを重ねながら教員の資質向上や指導法や教育内容の充実ための研修などを行っています。音楽教育に関しては、ワット・ボー小学校で力を付けた先生たちが地方の学校に出向いて現場の先生方に指導できるようになり、少しずつ州内にも広まりつつあります。また、一方で学校に通えないような貧困層の子どもたちへの就学支援を行い、家庭環境の改善と、保護者の教育に対する理解を深めるために現地の先生方と一緒に家庭訪問を実施しています。
『アナコットカンボジア』は法人化しておらず、みんなの思いだけで活動しています。私一人の力はとても小さいものではありますが、一緒に取り組んでくれる現地の仲間と、そして、日本で支えてくださる温かな皆さまの応援によって、少しずつ前に進んでいるところです。これからも、支援する側、される側ではなく、同じ人間として一人ひとりの人との関わりを大切に、現地の人たちと同じ目的を持って、共に歩んでいきたいと思っております。
田中 千草