認定NPO法人 ブリッジフォースマイル
児童養護施設について調査する機会を持った林恵子さんは、施設職員が子どもたちを守るため、大変な思いをしていること、また外部支援をうまく受け入れている施設がある一方で、受け入れられない施設があり、格差があることを知った。そこで、支援の意志がある企業などと施設を繋ぐ中間団体があればよいと考えた林さんは、2004年にNPOを設立し活動を開始した。①巣立ち支援、②伴走者の育成、③広報・啓発活動の3つが活動の柱。「巣立ち支援」は、高校3年生を対象に一人暮らしに向けた知識やスキルを社会人ボランティアと一緒に学び、巣立ち後に孤立させないよう居場所づくりや仲間と集うイベント開催などを行う。子ども1人に専任のメンターボランティアが付き、伴走し気軽に話せる個別サポート等もある。巣立ち前準備として中学・高校生向けの出張型研修も開催。2011年より給付型奨学金事業を始め、現在は、企業と連携して実施。その他、生活用品の寄付を仲介したり、夏休みには仕事体験を実施したりしている。親を頼れない子どもたちが社会に巣立つ前後の自立に特化した支援を続けている。「伴走者の育成」は、社会人ボランティアの活動を安心適切にできるように運営体制を整えている。ボランティアのスキルアップ研修や個別にサポートする時の関わり方の研修プログラムがある。児童養護施設職員、里親向けのセミナーも行っている。児童養護施設や里親家庭など社会的養護下にいる子どもは約42,000人、9割以上は親がいるがそのうちの6割は児童養護施設で暮らす。児童養護施設は原則的に18歳で退所となる。
この度は大変 栄誉な賞を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。設立より19年、本当に多くの仲間と協力者の皆様のおかげで今日の活動があります。改めて感謝申し上げます。
私は、もともと児童福祉には全く縁のない生活をしておりました。当時2人の子どもの子育てと自分のキャリアの両立に悩む中で参加したビジネス研修の一環でたまたま児童養護施設について調査することになりました。児童養護施設には、孤児ではなく、虐待を受け、親と離れて暮らす子どもがいることを初めて知りました。施設を出た後も、性搾取されたり、ホームレスになったり、なかには犯罪や自殺をする子もいたりすると聞き、こんなに豊かな日本でこんなに苦しい思いをしている子どもたちがいることに愕然としました。
そんな子どもたちを支える施設職員たちも、夜勤などハードワークに追われ、心の傷を抱える子どもたちのためし行動や問題行動の対応にバーンアウトしている現状も知りました。ですが、社会からの支援は、実態を知らないが故の思い込みからくる「善意の押し付け」になってしまう場合もあり、子どもたちには上手く届けられない現状がありました。
そこで、社会の有用な資源を、支援を必要とする子どもたちにつなぎたいと思い、NPOを立ち上げました。
私たちが柱にしている“巣立ち支援”は、親を頼れない子どもたちが社会に巣立つ準備をしたり、巣立ってからの生活を見守ったりする活動です。ボランティアと共にワークショップを行ったり、協力企業に仕事体験を受け入れてもらったりしています。
近年、巣立ち支援の必要性が広く認識されるようになり、2024年度からは施設を出てからの「アフターケア支援」も行政の役割と児童福祉法に明記され取り組まれるようになりました。また巣立ちの準備が整わなくても原則18歳で施設を出なければいけなかった子どもたちが、必要な場合は年齢上限なく支援が受けられるような法制度が整いました。しかし当分は、法が整備されても現実が追いつかないという状況が予想されます。地域間や施設間での、支援格差が広がっていくのではないかと思われます。どの子どもたちも夢や希望を持って笑顔で暮らせる社会を目指す私たちにとっても、新たなチャレンジが訪れています。引き続き、がんばります。