特定分野の功績
日本カブトガニを守る会
昭和53年にカブトガニの繁殖地として、唯一国の天然記念物指定を受けている笠岡市で守る会を結成。海の環境汚染により絶滅の危機にある「生きている化石」ともいわれるカブトガニの保護運動を展開、海洋生物の環境維持を支える。他県など5支部と個人合わせて約1,000人の会員により構成。各支部ごとに海岸清掃、生態調査、産卵調査、藻場の再生のためのアマモの植栽事業などの活動を行っている。年に一度の総会を開催し、研究会や繁殖地の見学会、市民参加型の公開講座を実施し、カブトガニと海の環境保護活動を市民と共に盛り上げている。
日本カブトガニを守る会は、昭和53年に岡山県笠岡市で結成されました。当時は、高度経済成長のまっただ中で、瀬戸内海沿岸の干潟は干拓や埋め立てにより減少し、カブトガニを取り巻く海の環境は大変悪化しておりました。
昭和32年の笠岡市富岡湾干拓106ヘクタールに続いて、国内唯一の国指定の天然記念物である、笠岡市生江浜のカブトガニ繁殖地も国営干拓事業によって干陸化され、カブトガニの保護が緊急の課題となっていた時期でもありました。
医業の傍ら、カブトガニの研究を行っていた故西井弘之先生が中心となって、昭和45年に同会の前身である、笠岡市カブトガニを守る会を結成し、カブトガニ非常事態宣言を出して、カブトガニの保護運動を強化していきました。
その結果、昭和46年に笠岡市神島水道一帯が、国の天然記念物の追加指定を受けることができました。また、昭和50年には、笠岡市立カブトガニ保護センターの設立にも繋げることができました。
昭和53年には、カブトガニ保護の波を全国に展開するべく、日本カブトガニを守る会の結成に至ったものです。
現在は、全国に笠岡、福岡、伊万里、大分、四国の5支部があり、長崎や山口などカブトガニ繁殖地のある地域を中心に、約1,000人の会員がカブトガニの調査研究と保護運動を展開しております。
会全体の活動としては、年1回の会報「かぶとがに」の発行と、毎年総会とあわせて開催しているカブトガニ研究会や講演会、一般市民の方々にカブトガニを広く知ってもらうためのカブトガニ公開講座があります。
このほか、各支部や地域単位で、カブトガニの産卵状況や幼生、成体の調査や住民の方々とともに行う海岸清掃活動や産卵観察会、子供たちを対象にした海辺の学校などの各種講座、カブトガニ保護運動を盛り上げるためのカブトガニフェスティバル、干潟の環境保全のためのアマモの移植事業、海外の学術シンポジウムへの参加など様々な活動を行っております。
この度は、身に余る賞をいただき大変光栄に存じます。
以前に比べると、カブトガニを取り巻く、海の環境は幾分改善の兆しが見られますが、この受賞を契機に、さらなるカブトガニの保護運動の展開と、海と干潟の環境保全活動に地域のみなさんとともに取り組んで行きたいと考えております。