社会貢献の功績
ジョゼリア・ロンガット
1990年の入管法改正により、豊田市の保見団地内で働くブラジル人の人口が、1万人近い住民の約半数を占めるなど激増。文化摩擦だけでなく子どもたちの教育問題が深刻化。2005年新設されたNPO法人が運営する「パウロ・フレイレ地域学校」にブラジルから校長として招かれ、大きな人間性で生徒に接し、さらに年代を問わず、地域の識字教育の向上に努めている。親はまず教育費を削ろうとするが、学校の経営状態が厳しい中、自らの給与の引下げ、子どもたちに学ぶことの大切さを伝えている。
2005年のはじめ、母国ブラジルから遠く離れ文化も違う日本へ来て、NPO法人運営による学校の教育者としての任務を引き受けました。そのころ(そしていまもですが)日本にはたくさんのブラジル人の子供たちがいて、切実な教育問題を抱えていました。(註)
私は日本に来るのになんの迷いもありませんでした。
私たちは地球における世界の市民であり、全ての人は国籍に関わらずたた一つの"人類"という仲間であるからです。私たちはこの地球と、生きとし生けるすべてのものを愛すべきなのです。
日本で教師として働いてきた年月で、多くの喜びと、そして悲しみも経験しました。
世界的な大不況が起きた時、学校運営の継続が危ぶまれましたが、学校内は団結し、教育を必要としているのに学費を払うことが出来なくなった生徒たちのために扉を開きました。それを可能にしたのは私たちの活動へご賛同いただいた方々のご支援であり、そしてそれは現在まで続いています。
財政的な問題から教育的業務を削減せざるを得なくなり、以前のように全学年への授業が継続出来なくなったことは非常に悲しいことでした。
喜びについても書きましょう。
授業で教えたことを、こどもたちが日常生活で使うのは、とても嬉しいことです。
例えば、家庭科の授業で裁縫と刺繍をやりました。わたしたちはその技術を生かしました。不況のとき、生徒たちは授業でならった裁縫でエコバッグを縫って、全国の人に購入してもらいました。その代金で生徒たちが広島へ修学旅行に行くことができました。
私たちの学校の教師の努力や、全ての人には教育を受ける権利があるという信念のもと賛同して下さった日本の方々の貴重な支援がなければ、これまでこの学校を存続させることは出来なかったでしょう。
私たちの活動に賛同し、支援して下さる全ての方々に、心より感謝申し上げます。
皆さんに永遠に感謝するためには、私の人生は短すぎると感じています。
(註)
たとえばアメリカ合衆国には、約120万人のブラジル人が暮らしていますが、ブラジル人学校は1校しかありません。2010年現在日本国内のブラジル人は30万人弱でアメリカの4分の1に満たないのですが、ブラジル人学校は優に100を超えています。
アルファベッドなど、ほぼ同じ文字を使用し、語彙にも共通性がある場合、母語以外の外国語による学習も比較的スムーズに行えますが、まったく異なった言語の場合、たいへんな困難を伴います。
アルファベッドの国から、漢字と仮名の国へ来たこどもたちが、勉強を続けるには、よほど特別な才能や家庭環境が必要です。
ロンガット校長のパウロフレイレ地域学校が所在する愛知県豊田市保見ヶ丘は、人口の半数がブラジル人という、外国人集住地域ですが、不就学の状態に陥る子供たちが続出していました。
早い時期にブラジル人学校が設立されましたが、一般の学校が、公立学校ならば税金で運営され、私学でも様々な助成金があるのに対して、ブラジル人学校にはそれがなく、どうしても授業料が高額となります。不況時などに収入が減った場合、通い続けることができなくなります。パウロフレイレ地域学校はこどもたちの教育を受ける権利を守るため、できる限り授業料を安く、良質な教育を提供することを目指し、全国の支援者から寄付を受け運営を続けています。
保見ヶ丘ラテンアメリカセンター http://www9.ocn.ne.jp/~celaho/
保見ヶ丘特定非営利活動法人保見ヶ丘ラテンアメリカセンターパウロフレイレ地域学校
校 長 フイジオ・ジョゼリア・ロンガット