社会貢献の功績
伊集 盛元
沖縄県議会議員として文教厚生委員部会に所属する中で、青少年問題が多々あることに気づき、同63年より高校中退者の問題解決に献身的に関るようになった。平成8年に県議を退いた後、「沖縄産業開発青年協会」を立て直し、若者を育成するとともに、平成22年には念願であった更生保護事業が認可され、「やんばる青少年隊」を設立、非行や犯罪を犯した青少年を受け入れている。自宅から120キロ離れた施設に毎朝4時に出勤し、青少年たちと関わり自立させ社会人へと導いている。
沖縄県は、28年という長い間、異民族支配下に置かれました。そのことで、さまざまな本土との格差が生まれましたが、特に一番大きかったのは学力の差でした。私は国会議員の秘書、それから県議会議員になって、本格的に教育問題に取り組んできました。特色ある県立高等学校建設に向けて鋭意努力してきましたが、校区制という厚い壁にぶつかりました。
知事及び教育庁、その他の市町村長などの関係者と連日話し合いを重ねました。その結果、全県一区の特色ある高等学校を3校つくることが出来ました。そのおかげで、大学進学率も高くなり、難関といわれている大学にも合格者が徐々に増えていきました。本土との差が一歩一歩改善され、安堵していたころ、衝撃的な出来事に遭いました。
それは毎日新聞1面トップに大きく掲載された「沖縄県高校中退率10年連続ワーストワン」という記事でした。目の前が真っ暗になったのを今でも鮮明に覚えています。以来、自分がやってきた教育問題は、単なるエリート作りに終始していたのではないかと自問自答し、それがきっかけで、青少年の健全育成はどうあるべきか、中途退学問題に本格的に取り組みました。
まず、びっくりしたのは、本県の未成年者の飲酒及び喫煙者は全国平均の10倍、全般的な青少年の犯罪は全国平均の3倍だということです。また、離婚率は全国でもっとも高く、夜型社会で、県民所得は全国最下位、その所得格差は全国ナンバー1などという実態が浮かび上がってきました。
このデータを踏まえ、各県立高等学校にその対策委員会を設置させ、高等学校PTA連合会にも中途退学委員会をつくり、私が委員長として全力を尽くして参りました。関係各位の努力で3年後には年間千名ずつ中途退学を減らすことができました。沖縄産業開発青年協会(青年隊)は基本的には、コンボ、ブルドーザ、クレーン、フォークリフト等々11種類の資格を取得できる職業訓練校であります。確かにこれだけの国家資格を取得することで、92%以上の就職率になっているわけですが、今日の日本は資格万能主義で、資格を取得するために一生懸命になり、一番大事な人間をつくることに欠けてきた傾向にあります。
青年隊では、朝の6時半起床に始まり、1時間程度の基礎訓練、夜の10時消灯まで連日、自分で自分をみつめる、すなわち「思いの種をまいて行動を刈り取る。行動の種をまいて習慣を刈り取る。習慣の種をまいて人格を刈り取る。人格の種をまいて人生を刈り取る」という格言の通り、繰り返し続けることによって、思いやり、勇気、忍耐、正義感、自分の言葉に責任を持つ人づくりをモットーにしています。
「一日一善」という言葉の持つ重みが、少しずつ理解できるようになりました。
「大器は大成せしめ、小器は小成さす」という、吉田松陰の言葉があります。若い青年達と出来るだけ同じ目線になり、向き合うことの大切さを痛感しながら、日々学んでいます。