特定分野の功績
大門 清春
昭和45年に海外から原油タンカーが積んで来た原油を陸上のタンクへ移しかえる際の荷役装置のポンプとタービンの専門メーカーである(株)シンコー(広島市)に入社。原油荷役装置のケーシング部品の加工に高い技術を発揮し、加工システムを確立し加工時間に著しい成果をあげ、製品の生産の大きな礎となるなど造船業界の発展に尽くされている。
この度は栄えある、社会貢献者として表彰して頂き、厚く御礼申し上げます。
受賞の推薦をして頂いた関係者の皆様方には、感謝の気持ちで一杯です。今後も、この受賞に恥じないよう、技術技能の向上の励み、機械加工の改善を進め、優れた舶用ポンプの製造に邁進して貢献したいと思います。
私は1970年に㈱新興金属工業所(現、㈱シンコー)に入社、そして機械加工の職場に配属となり、主にポンプケーシングの加工に携わってきました。
1984年に船舶の機関室に搭載される、多種類のポンプケーシング生産のため、多品種少量生産に適し、24時間稼働可能なシステムFMS(Flexible Manufacturing System)を導入、その際私はシステム担当者の一員に指名されました。当時は素材に芯出し用ケガキ作業を行い、段取り、機械加工という工程でしたが、FMSでは以前の加工方法と違い、素材に加工用芯出し作業を行わないで、段取り及び機械加工します。そのため芯出し無しの素材を直接加工用治具に取り付けるため、治具が安定したものでないといけないので、治具造りには大変苦労しました。まずケガキ線無しの状態の素材を、常に一定の位置にセットできる事が可能な物。次に機械加工中ビビリ(スムーズに加工できない状態)が発生しないように加工できる事。これが重要でビビリが発生すると、端面、内径、外径、寸法が決まらないのです(寸法 公差0.01〜0.02)。当初このビビリが発生するため、試行錯誤して治具の補強、段取り方法及び加工用バーの大きさ長さ、バイトの変更修正を行い、これらの問題をクリアしまた。
加工用プログラム作成では、テスト加工を幾度も繰り返し行い完成させました。吊具においては、安全かつ簡単に素材をセットできる事を条件に考案しました。
この様な問題をクリアして、段取り時間を短縮(例:30分/台を15分/台)でセットでき、以前の半分の時間で完了。
加工時間においては、多工程で加工していたので、例えば20H/台が3H/台で完成。この様に、FMSで無人加工を可能にした事により、飛躍的な時間短縮ができました。五面加工機では、本体、カバーを分けて加工する方法で無人加工を可能にしました。結果、例えば、4日/台が、1日/台で完成、大幅な加工時間の短縮となり、生産に貢献できました。
加工用治具、吊具及び加工プログラムの作成は、上司の方をはじめ、生産技術部、先輩諸氏の指導、同僚の協力により完成することが出来ました。
今日では、当時苦労したお陰で治具作成も順調に行われています。今後は加工、段取り方法、治具の作成等、後輩に技術を伝承しつつ共に技術、技能の向上を目指し努力して、優れた舶用ポンプの製品造りに貢献したいと思います。