社会貢献の功績
茂 幸雄
福井県の東尋坊を管轄する警察署で勤務するなかで、 同所で年間20名以上も自殺者が出る現実を目の当たりし、 定年退職後の平成16年から、同所で相談所「心に響くおろしもち」を活動の拠点に自殺企図者を保護する活動をしている。会員のパトロールにより自殺企図者を保護した後の生活支援、自立支援などの自殺防止活動に取り組み、300人近くの命を救われるとともに福井市内にNPO法人「心に響く文集編集局」を結成され、自殺を防止する活動を続けられている。
『福井県・東尋坊での自殺防止活動』
みなさん、福井県の東尋坊(とうじんぼう)という場所を御存知でしょうか・・?
この東尋坊へは全国から終焉の場として多くの人が集まってきており、過去30年間に646人、ここ10年間に227人が日本海に向かって飛び込み自殺をしており、毎年200人以上が自殺未遂者として保護され、そのうち約8割の人が県外者です。
私は、平成15年度に42年間の警察官勤務を終える最後の1年間を東尋坊を管轄する三国警察署(現坂井西警察署)で勤務し、多くの自殺者の死体を検視し、多くの遺書を読み、多くの自殺企図者から悩み事を聞いてきました。また、自主的に毎日のように東尋坊をパトロールしていた時、東京から来た老カップルの自殺企図者と遭遇し行政機関に引継いだものの思いが叶わず新潟県で自殺してしまった事案も発生しました。
この様に多くの自殺企図者から話を聞いて分かったことは、全員が「まだ、死にたくない・・」「誰か、助けて欲しい」「出来るものなら、もう一度人生をやり直したい」と叫んでいたのです。
この助けを求めている人たちを救う行為は "人命救助" であると思っています。
私は定年退職を機に東尋坊での自殺防止活動をする事を決め、多くの仲間を募って平成16年4月にNPO法人を立ち上げ、現在86人の会員さんとともに日夜パトロールを続け、今日(10/1)までに288人の自殺を水際で食い止めてきました。
私たちと遭遇した自殺企図の皆さんは、リストラや一家離散、借金による苦悩など、その理由は様々ですが、この悩み事を解決するために関係機関や職場・家庭の中まで付き添う同伴活動もしており、その悩み事の解決に向けたお節介もしてきています。
彼らは常に、「支えてくれる人」「頼れる人」「逃げ場所」を求めています。しかし、それが叶わないために天国を目指してしまうのです。私は"この世に逃げ場" を創ってあげなければならないと思っています。また、自殺を考えている人たちのストレスや悩みなど、彼らが背負っているさまざまな荷物を一つでも良いから取り除いてあげなければ自殺は減らないと思うのです。
「健康で生きがいを持って暮らすことのできる社会」の実現に向けて官民が一体になって取り組まなければならないのであって、私も微力ではありますが今後もこの活動を続けていきたいと思っています。