社会貢献の功績
榊原 千秋
金沢大学医薬保健研究域助教
小松市内の福祉施設で保健師として勤務していた平成8年に九死に一生を得る交通事故に遭った。リハビリ中に、ひとりのALS(筋委縮性側索効硬化症)患者と出会い支援活動を始めた。活動は難病支援にとどまらず、生と死の文化を豊かにする活動に広がり「いのちにやさしいまちづくりネットワーク」を設立。コミュニティハウスの立ち上げ・がん患者・家族の支援活動・聞き書きサークルなど、14年にわたり多彩な地域活動を続けられている。
愛媛県宇和島市出身で、町役場、在宅介護支援センターの保健師・ケアマネとして21年携わり、2004年から金沢大学地域看護学助教。1984年に母親を脳腫瘍で亡くした経験から終末医療のあり方に疑問を持ったことが在宅ケアにかかわるようになったきっかけ。
96年交通事故で生死をさまよい、その後1年間のリハビリを経験した。居場所を失った喪失感や自己否定感を感じていたその頃、人工呼吸器を装着し在宅療養をはじめたALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病の西尾健弥さんと出会う。西尾さんに「今一番したいことは何ですか」と尋ね、その願いを叶えるための能登旅行やホームコンサート等の支援が、ALSと仲間達という活動に発展した。
西尾さんが他界された後も、詩人の谷川俊太郎氏らを迎えて「魂のいちばんおいしいところ」のコンサートを継続してきた。コンサートに参加した方が自然にボランティアとしてかかわられるようになり、重度心身障害児の親の会のお母さんたちが活動の中心として活躍している。がん患者さんとご家族、医療保健福祉従事者、市民の方々と活動が広がり「いのちにやさしいまちづくりネットワーク」となった。
病気や障がいを持ったとき自分の人生に新たな価値を見つける希望を持ち、自己表現や創造性を励ますしくみが必要と考えている。相談窓口や拠点を持たないわたしたちが目指すのは、ホスピタリティなもてなしの心にあふれたまちづくりである。いのちのスープの会、いしかわ聞き書き長屋、金沢大学聞き書き サークル「星ことば」、がん患者さんと家族の声からつくる支援のかたちプロジェクト、いしかわ在宅緩和ケアを語る会のひとりひとりの活動が、その役割をはたしている。
マギーズ(Maggie's)
がんになっても希望を持ちたい、そして当たり前の生活を大切にして暮らしていきたいという願いをかなえるための支援のかたちを探しています。
10年2月にマギーズ の代表ローラ・リーさんらをお迎えし講演会を開催。
「あなたはがん患者ではなく、ひとりの価値ある個人である」という姿勢は、わたしたちの願いそのもの。よき理解者を増やしつつ、そのプロセスを大切にしながら、いつかマギーズを実現したい。
*「聞き書き」とは、ひとりの人の人生の語りを聞いて、語り手の言葉をそのまま文字として記録し後世に書き残すこと。「聞き書き」には、人と人が出会い、つながり、何か新しいもの創り出すエネルギーがある。
*マギーズ(Maggie's cancer caring centers)
造園家で中国庭園の研究家でもあった故マギー・ケズウイック・ジェンクス(1988年乳がんの宣告を受け、1995年多臓器がんで死去)の遺志を受け、がん患者・家族、また友人に至るまで様々ながんの悩みに応える無料相談支援施設として、1996年にイギリスのエジンバラに1箇所目が開設された。(イギリスのNHS=公立病院の「がんセンター」の敷地内に、「別棟」(院外)として設置、全額チャリティ&他の運営主体により運営)