受賞者紹介

平成21年度 社会貢献者表彰

社会貢献の功績

なえむら とみこ

苗村 登美子

(68 歳/大阪府堺市)
苗村 登美子
知的障害と心臓の病気を持つ子の親として、この子を絶対に育てる、という気持ちから、昭和 53 年に障害者の働く場として、また自立に向けて楽しく生きていける場としての共同作業所「つつじ共同作業所」を指導者 1 名、利用者 7 名で堺市に設立した。その後、平成 14 年には作業所が認可施設「ワークセンターつつじ」となり、親なき後の暮らしも視野に 35 年にわたる施設の運営を続け、現在生活介護、生活訓練、就労移行などを行なう陶芸、織物、レストラン、喫茶などをスタッフ 32 名、利用者 62 名で運用する施設に拡大している。
推薦者/井川 洋子

受賞の言葉

この受賞は、これまで 35 年間ともに力合わせてきた家族会後援会、そしてすべてのスタッフみんなで頂けたものであると、心からの感謝を申し上げます。「継続は力なり」と教えていただいた森清範先生(清水寺貫主)のお言葉を心に持ち続け、35年にわたるわたしたちの夢の実現に取り組んできましたが、社会貢献者表彰というすばらしい機会を賜り、さらにこれからのわたしたちへの大きな励ましとなりました。障がいを持つ人たちの笑い声のたえまなくきこえる温かな施設、親と子がいつもおたがいに生きていることの喜びを分かち合える環境を創り、これからもずっと障がい者の人たちと人生を歩んでいきたいと思います。

作品を紹介する苗村さん

私は永年、障がい者とその家族とご一緒させていただいている。その中で我が子とゆっくり時間を過ごすことなく亡くなった親御さんも少なくない。また今現在も認知症になり、施設に入り我が子と十分な面会の機会も持てず暮らしているという切ない親子もいらっしゃる。

この様な現実を目にして、それぞれが施設での生活になっても、隣接していれば会う機会もあり、お互いに生きていることの喜びを分かち合うことができるのでは…。この事は、35 年にわたる「つつじ」での家族会と親の熱く大きな夢でもある。

既に始まっている老々時代に、親と子が離れ離れにならないですむ施設をぜひつくりたい。家族会と家族の夢の実現…。これが私たちの切なる願いである。私自身、知的障がいと心臓に病気のある次男を育てながら福祉の世界に入った。当時から障がい者の親の高齢化が問題になっていた。ある高齢の母親が離れ離れになった子どもの名前を呼びながら、息を引き取った姿が今でも忘れられない。

障がいを持つ人たちのために、日本全国で様々な取り組みが行われている。

私たち「つつじ」が目差すのは、障がい者のためのケアホームと認知症の高齢者の介護にも対応できる住宅を併設し、強い絆で結ばれた親と子が、楽しみながら最後まで共に暮らせる場をつくること。敷地内に農園もあって、親と子が共に花や野菜づくりなどの園芸の農作業をする事もできる、ごく普通に子どもが親を看取れる、そんな環境をつくり出したいのである。

この様な施設はまだ日本にはない。何かと急激な施策の転換を余儀なくされている今、法人の事業展開も様々な困難と厳しい現実に直面している。しかし私たちは、これまで出会った障がいを持つ人に「人間の原点」を教えてもらい、働かせていただいている。これほどありがたいことはない。親と子が離れ離れにならないような、これまでにない施設をつくる。この熱く大きな夢があるから、私たちは今も頑張れるのである。この様な意義ある事業に取り組める事に大きな喜びを感じている。

障がいを持つ人・その家族・施設に関わる人々・地域の方皆で目下奮闘中である。このたび私たちのこうした取り組みを一人でも多くの方々に知っていただける機会を与えられたことに心から感謝したい。本当にありがとうございました。


親と子の強い絆に夢乗せて
社会福祉法人美原の郷福祉会
理事長・苗村 登美子

ワークセンターつつじ入口
イタリアンレストランで働く姿
作業風景

Ms. Tomiko Naemura

(68 years old, Osaka, Japan)
As the mother of a child born with a heart disease and mental impairment, Ms. Naemura was nonetheless determined to bring the child up as well as she could. With that conviction, she established in 1978 a small facility with one leader and seven members, where people with disabilities would live and work and learn to be independent in the future. She thought ahead about how children would be able to live after their parents had died, and for 35 years managed the facility with this philosophy. Today the facility has grown to accommodate 62 members, a staff of 32 who provide support for daily living, training for independent living and instruction in pottery and weaving projects, as well as a restaurant and coffee house managed also to provide vocational training.
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