社会貢献の功績
森下 一
森下さんは姫路市内で「神経内科診療所」を開業する精神科医である。その傍で多くの不登校や引きこもりの子どもたちに接し、「人を信頼出来れば、子どもは育つ」との思いで不登校児への取り組みを始めた。
昭和61年不登校児のためのフリースクール「京口スコラ」を開設。平成元年に私財を投じ日本初の不登校児のための全寮制認可高校の「生野学園高等学校」を開設し、14年には不登校の子どもたちの低年齢化に直面し、中学も開設した。
学校は、登校拒否に至った子どもたちなどを中心に共同生活を送り、定員は高校99名、中学校60名である。朝来市生野町の広く豊かな自然の中で、子どもたちひとりひとりが自ら伸びやかに知性と人間性を育む学園を目指し、生徒による入学金や授業料、寮費などと県からの補助を中心に運営されている。
さらに15年には子どもの心の成長には多くの大人と接する環境と社会体験が必要と訴え、子どもたちが自立して育つ活動「鎌倉てらこや」(「てらこや」)を立上げ、16年から本格的に活動を開始した。
森下さんは「子どもたちに対する親のあり方」などについて全国各地を講演で訪れていたが、鎌倉市での講演の折り同市の青年会議所のメンバーと知合い、「てらこや」を開始するきっかけとなった。
不登校や引きこもりを作らないためには、子どもを受け入れる多様で広いネットワークが必要であるとの考え方から、子ども、若者、大人が共に学び、遊び、語り合える現代版の寺子屋のモデルを鎌倉に作ろうというものである。
賛同した同市にある建長寺、光明寺、高徳院、円覚寺などの名高いお寺が宗派を超えて「てらこや」の場所を提供。子どもたちの親ごさんや青年会議所のメンバー、早稲田大学の学生(活動を支援する同大の池田教授のゼミの学生)、市民ボランティアなどにより様々なプログラムが実践され、5年間で子どもの参加者だけで2,000名近くになっているという。
「てらこや」は参加者や支援者による寄付などにより運営されているが、活動主体でもある青年会議所(市川事務局長)は、鎌倉から全国の青年会議所へ「てらこや」運動のモデルケースとして発信し、それをきっかけに活動が、全国15~20ヵ所の地域活動として広がっている。
森下さんは「人を信頼出来れば子どもは育つ。自分を受けとめてくれるという信頼関係が子どもとの間にあることが大事だ。さらに不登校の問題と取り組んでいきたい。」と活動を続けている。
受賞の言葉
生野学園高等学校は不登校生徒たちの魂の再生を願って創られました。鎌倉てらこやは子どもたちが日々を妖精の様に輝いて生き、良き人々に親しんで欲しいという地域の人々の願いから生まれました。私たちの営為を支えて下さっている多くの方々、とりわけ、子どもたちのお父さん、お母さんにとって、今回の受賞が励になるよう願っています。