社会貢献の功績
松本 淑子
いろいろな事件を見たり聞いたりするたびに、今の世の中は大人も子供も生きて行くことの難しさが増しているように思える。自分ひとりで悩みを抱え込んでしまったり、ほんのちょっとした行き違いで迷路に入り込んで苦しんでいる人達が増えている。松本さんはこのような状況に対して、心理カウンセリングや教育相談などにより、精神的に前向きに立ち直れるように支援を続けている。
峠工房は、昭和44年に私設の障害者教育の訓練施設として誕生した。神奈川県横浜市の公立中学校で、自ら作った特殊学級の担任をしていた淑子さんのご主人が、知的障害者の生徒達の最終学歴が中学であることを重く受けとめ、もっと時間をかければ社会に送り出せる、また一旦世に出てもつまづいて落ちこぼれてしまう生徒達をなんとかしたいと思っていた。
そしてご主人が退職してから2年、紆余曲折を経て横浜市の上飯田に工房を設立した。障害者訓練施設として認可されると思っていたが、知的障害者教育は中学までという当時の法律に合わず認可されなかった。その後も県や市など行政側と陳情や話し合いを重ねたが、問題は解決しなかった。
このような中で、入園を求める子供達が30人も工房を訪れるというようなこともあり、それなら無認可であることのフットワークの軽さや、地域への働きかけなど工房でなければできないこと、工房だからできることを追求していこうと、公的助成なしで維持継続していくことを決めた。
昭和62年にはご主人が亡くなり、淑子さんは工房の閉鎖も考えたが、ここに居場所を見つけた子供の親達の強い思いに後押しをされ、「新入生は受け入れない」、「教育相談などの部門を充実させる」などの条件で継続を決意し現在に至っている。
工房の運営は、会員の会費と地元の企業から印刷や建築用ナットの組立てなどの下請け的な仕事で賄って来たが、不景気のあおりで企業からの支援が滞りがちである。カウンセリングは淑子さん、作業はボランティアの協力や近くに住む息子さんや娘さんの協力などにより、やりくりをしながら維持している。
淑子さんは「知的障害などの研究が進み、制度も充実し分類や区分けが進み、むしろ困難に直面させられる子供が増え、悩み、追い込まれる親も増えているように思う。1プラス1がイコール2ではなく、50や100にもなる成長を見せる子供もいる。このような人達への支援は、誰かがやらなければいけない」と活動を続けている。淑子さんは「知的障害などの研究が進み、制度も充実し分類や区分けが進み、むしろ困難に直面させられる子供が増え、悩み、追い込まれる親も増えているように思う。1プラス1がイコール2ではなく、50や100にもなる成長を見せる子供もいる。このような人達への支援は、誰かがやらなければいけない」と活動を続けている。
受賞の言葉
人間にとって必要なことは何かを追い求めて、ただ仕事を続けてきただけの私にとって、今回の受賞はあまりにも思いがけないことであり、心から感謝申しあげます。
今まで私を導き、学ぶ機会を与えてくれた大勢の子ども達や障害を持った人達、そして、勇気づけ峠工房を支えてくださった皆様が認められたのだと、誇らしい気持ちです。少しは恩返しできたかなとうれしく、真の共生の社会を夢みて続けて行こうと思っております。