第三分野/特定分野の功績
𠮷田 浩美
吉田さんは、京都造形芸術大学空間演出デザイン学科ファッションデザインコースの卒業制作で自分が表現すべきものを模索していた。当時、日本ではイラクに自衛隊を派遣する準備が進められ、毎日TVで戦争の激化により住む家を失ったイラク人家族や明日食べるものさえままならぬ子供達の姿が報道されていた。それを見た吉田さんは、同じ時代と時間を共に生きる仲間として、家族や友達を助けるように遠くの国で苦しんでいる人達に何かできないかと考えた。そこで思いついたのが、自分が学んできた「ファッションデザイン」の手法を使って、同世代の若者がおしゃれに、手軽に献金出来るシステム『プチボラ』であった。
プチボラとは、吉田さんが制作したTシャツを買うことが同時に募金に応じることになるシステムである。Tシャツには、飢餓や食糧問題を抱える5つの国や地域(インド、インドネシア、バングラディシュ等)で採れる5種類の穀物や果物(リンゴ、マンゴスチン、マンゴー等)がデザインされている。吉田さんはこのプロジェクトを実現すべく、国連世界食糧計画(WFP)の事務所を訪ね、WFPが70カ国を対象に実施している学校給食プログラムを通して寄付する体制への協力を取り付けた。また、その間に自費でインドを視察し、関西一円の大学から仲間を募り、販売するTシャツのデザインを共に考え、全てを手刷りで製作し、「国連世界防災会議 総合防災展」、「大阪ビジネスパークフリーマーケット」、「京都造形芸術大学卒業制作展」で販売した。その売上は、戦争で家を失った家族や明日食べるものもない子供達に贈られた。
吉田さんのプチボラプロジェクトは、寄付活動を楽しく気軽にできる買い物と組み合わせ、購入者がお気に入りのTシャツを着用することで多くの人に食糧問題を理解してもらい宣伝もできるというユニークなものである。堅苦しくなりがちな深刻な問題をファッショナブルに仕上げることで、普段このような問題に無関心な多くの若い人々に世界が抱える問題を訴え、関心を拡げようとする点において、これまでにない国際協力・支援の形といえる。
受賞の言葉
この度は、賞に選出して頂き誠にありがとうございました。
社会情勢に対して、「私に何ができるか」という気持を大切に活動を行って参りました。そして様々な方と出合い、ご協力して頂いた事で、考案から実行に至りました。これからも発足した時の気持を持ち続けて、取り組んで参りたいと思います。