第二部門/多年にわたる功労
荒井 裕司
荒井さんの活動は、30年程前近所の子どもたちの勉強を夜間下宿で見ていた20代の頃に遡る。そこには、学校に居場所のない子ども達が次々と集まってきた。そんな子ども達のために赤字を覚悟で日中も塾を開いた。予想に反して更に多くの生徒が通ってくるようになった。子供達に何か大きな問題が起りつつあることを感じた。
その後、高校再受験のための予備校、フリースクールを経て、92年に通信教育との連携で高校卒業資格が取得できる東京国際学園高等部を設立し、ひきこもりや、不登校の子どもたちを積極的に受け入れた。また、不登校などで悩む人たちへ参考情報を発信したいと考え、95年に『登校拒否の子どもの進路を考える会』を設立。講演会やセミナーを開催し、参加した医師や教師、カウンセラー等の協力を得てネットワークを拡げていった。そして、セミナー参加の医師等を通じて不登校の子どもを持つ親からの相談が徐々に来るようになっていった。
しかし、ひきこもりや不登校の子は外出が出来ないため、学園に来ることが出来ない。相談には当人ではなく親がやって来る。当人が外に出られないなら自分が会いに行こう。これが20年以上続く夜の家庭訪問の始まりだった。試行錯誤を重ねながらの家庭訪問だった。子供のもとを初めて訪れる時がその後の問題解決の成否を左右すると分かった。荒井さんは、訪問時の第一印象を非常に大切にする。突然の訪問で不意を衝いて会ってしまうこともあれば、会えなくても無理強いせずドア越しに声を掛けて帰ってくることもある。どんな状況であろうと一人一人に向き合い、望まれればどこへでも出掛ける。こうして今まで1000人以上の子どもたちを救ってきた。荒井さんの取り組みは、学生が高い確率で社会へ適応してゆく東京国際学園の成果にも現れている。
受賞の言葉
この度は多年にわたる功労という名誉な賞をいただき誠にありがとうございました。
30年ほど前から不登校やひきこもりの子どもたちと関わってきました。子どもたちと信頼し合うことが問題の解決のポイントと感じ、家庭訪問を20年続けてきました。この仕事は私のライフワーク。これからも子どもたちの許に訪問を続けます。