第二部門/多年にわたる功労
村上 一枝
村上さんは、1989年から日本の植林NGOのスタッフとして活動を始めた。翌90年にはマリのローカルNGOに加わり農村医療を実践し、93年からは農村自立協力の為のNGOを独自に設立した。以降、世界の最貧国の一つであるマリ共和国の農村自立のために働いて来た。93年にマリ人助産婦と村に住み込んで始めた活動は、現在約100ヶ村、住民約40,000人が受益の対象となっている。また、NPO法人西アフリカ農村自立協力会を主宰し、会員約400名と共にアフリカでの経験を国内に還元する地道な努力を続けている。
村上さんは、新潟市内で開業していた歯科医院を閉じて、人生の後半をサヘルの人々と共に生きる決心をした。マリ共和国の農村の女性は子供の時から水汲みや薪拾い、家畜の世話、子守など過酷な労働を強いられ、結婚してからは高い妊婦死亡率、乳幼児死亡の危険に晒されている。これらの人々を目の前に、村上さんは私財を投じ、退路を断ってアフリカ定住のボランティアに転身した。
活動の特徴は、女性の視点からのきめ細やかな心遣いである。深井戸を掘り清浄な水を確保する。野菜や果樹を栽培し、緑を増やしながら現金収入を増やす。寄生虫駆除やマラリア予防を行う。文字を教える。改良かまどや製粉所を設ける。そして、これら活動に必要な人材を村の中から育成する。特に村の女性の意識変化は、夫や子供に影響を与え、男性中心の伝統的村落社会に自立意識の変化を与えている。
今日、砂漠化は、100カ国以上10億人を超える人々の生活を脅かしているといわれている。どのような砂漠化防止対策も、地域に住む住民一人ひとりが、自立安定した生活を作り出す意欲を自ら持たなければ成り立たないと思われる。村上さんは灼熱のサハラ砂漠の南端において、自らも度々マラリアに倒れながら、サヘルの村人の明日の幸せのために人生を賭け活動を続けている。
受賞の言葉
この度はありがとうございました。晴れがましい席に並ばせていただき嬉しく思いました。私は、もしも自分がアフリカの農村に住んでいたら、と考え1989年以来、人々への支援を続けてまいりました。ほんの一点を照らすだけの活動で、まだ道半ばです。今後も精一杯の努力を続けてまいります。