第三分野/特定分野の功績
アネット キャラゲイン
キャラゲインさんは、平成2年~5年にアメリカ空軍嘉手納基地に法務官として勤務した。このとき、駐留する米軍人や軍属の男性が、地元の女性たちと恋愛や結婚をし子どもをもうけているにもかかわらず、任務終了後に帰国しその途端に連絡を断ち、母子を置き去りにしている現実を目の当たりにした。
米国には政府が養育費を強制的に徴収する制度がある。「父親が米国人なのだから、日本の女性たちもこの養育費履行制度を利用できるはずだ」とキャラゲインさんは考えた。除隊後に沖縄に戻り、平成8年に宜野湾市で外国法事務弁護士として開業した。すぐに父親の捜索や養育費請求について相談にくる日本人女性が口コミで増え始めたため、9年から、独りで各州の養育費履行強制局に手紙を書き始めた。その後、全米養育費履行協会(NCSEA)という米国の非営利法人の会員になって人脈を広げ、協会幹部や各州の強制局の担当者らの協力を得て、沖縄から養育費を請求する方法を整え、平成10年に初めて養育費支払を実現した。
キャラゲインさんは沖縄県庁や地元の弁護士会、裁判所などに積極的に出向き、女性たちが置かれた現状を訴え、支援を要請してきたが、公的な財政支援は一切得られていない。養育費支払のための膨大な事務作業や丁寧なヒアリングなどをすべて無償で行い、母親が支払うのは請求に必要な登録料と切手代などの必要経費だけである。無償の活動を支えるのは「無責任な親のせいで子どもが不幸になるいわれはない」という信念だという。
日本では「母子家庭には児童福祉手当がある」との考え方が一般的だが、無責任な父親による「置き去り」は、残された母子を苦しめるだけでなく、福祉を支える日本の納税者の負担ともなっている。キャラゲインさんは、ある意味で政府が担うべき仕事を無償で引き受け、確かな実績を上げていると言える。