第一部門/緊急時の功績
船川丸乗組員
米国のヨット・グッドナイトムーン(約13m)は、太平洋のキリバス共和国からハワイ・オアフ島に向かって11日に出港したが、17日に大しけに遭いマストが壊れ、エンジンも故障して航行不能となり、漂流を始めた。救難信号を受け、航空機から位置を確認したアメリカ沿岸警備隊は、現地時間18日午後11時すぎ、ヨットから約130キロと、一番近くにいた船川丸に救助要請を行った。船川丸は生徒20人と指導教官2人、船員19人の計41人の乗組員が乗船し、1月13日に日本を離れ、3月22日までの予定で、ハワイ南西沖などで操船訓練、マグロはえ縄漁などの長期航海実習を行っていた。
警備隊から要請を受けた船川丸は実習を切り上げ、潮流からヨットが流されていく位置を予測し、19日午前3時20分すぎ、香川県立多度津水産高校の漁業実習船・香川丸とともに現場海域に向かった。午前9時、船川丸はハワイ島の南西沖約480キロを漂流していたグッドナイトムーンを発見した。ヨットは位置を知らせる機能を失っており、沿岸警備隊は他の遭難現場に向かっていて不在だった。この時に発見できなければ、ヨットは乗員もろとも行方不明になったかもしれなかった。川村船長は本当に安堵した。
しかし収容作業にも困難が伴った。当時の現場の海域は東の風8~12m、4~5mの波があり、重量があり安定している船川丸に対し、軽いヨットは波のため大きく上下した。船川丸の船体に衝撃を吸収するエアフェイダーを装着し、ヨットに接舷後、甲板員が乗り移った。上下動が大きく異なる二隻の船の間を、船川丸の乗組員が手を伸ばしヨットの乗員を一人ずつ移乗させた。全員を無事収容した後、甲板員がロープをヨットのへさきに結び、救助作業開始から1時間45分後に曳航に入った。この間、香川丸が緊急事態に備えて近くに待機し作業を見守った。
川村船長が後に語ったところによると「ヨットは木の葉のような状態だったので、とにかく本船に乗り移る際にけがをしないようにと心掛けた」「当直の船員を除き、みんな3時間も寝ていない状況だったが、船乗りとして当然のことと考え、もくもくと救助活動をした」という。ヨットが波に押し出されて一気に船川丸に入ってくれば、救出作業をしている全員が潰されてしまうという最悪の可能性もあった。
3日間漂流し衰弱していたグッドナイトムーンの乗組員らには、食事やふろが提供された。船長のバンダービーク氏は「果敢な救助活動と手厚いもてなしを受けた。日本の海の男たちの気持ちに感謝している」と話した。