四国八十八ケ所ヘンロ小屋プロジェクト
建築家の歌一洋(うた いちよう)さんが2000年に始めた、四国に遍路小屋を建設するプロジェクト。約1,200kmの「歩き遍路道」の4.5㎞毎に1棟ずつ、広さ5.10坪程の遍路小屋89棟を目標に58棟を完成させている。歌さんは徳島県出身で小さい頃に自宅にお遍路のために出入りしていた様々な人々にお米を差し上げるなどの「お接待」をした思い出がある。その中で「お遍路さんが休憩する所があればいい」と言っていた人がいたことを思い出し、建築家として休憩用の小屋なら造れると思いたち、個人で数棟を建てたことがプロジェクトのはじまり。讃岐(香川県)で誕生した、平安時代初期の僧侶である弘法大師・空海が開創したといわれる四国八十八ヶ所のお寺(霊場・札所)を巡札(お参り)することを「お遍路」という。お遍路を支える無償の行為は「お接待」という慣習(文化)として引き継がれている。
「支えあい「お接待」の精神を持つ遍路文化の継承と広がりを願って」
四国に空海が開いた八十八ヶ所の霊場札所があります。
この札所を巡拝する1400㎞の遍路道89ヶ所に、お遍路さんが休憩、仮眠する「ヘンロ小屋」をボランティアで造るプロジェクトを推進中。2001年に1棟目が造られ、58棟が完成しました。
趣意
小屋を手段として「祈り」「人と人、人と自然のふれあいや支え合い」「利他のこころ」
が四国から日本、世界へと伝播することによって、やさしい社会になることを願って。
小屋の設計
地域の人と相談しながら、歌一洋が設計します。
地域特有の風土・産業・文化・伝統建築等を活かすこと。また空海の思想を反映させるなど物語をつくります。
小屋でのふれあいが生まれ、安らぎ、いい気を感じられる空間構成であること。
地域の景観ポイントとなり、新たな風景が創出できればと考えています。
造り方
地元の方々が土地提供、寄付金集め(支援する会の資金も含め)、労力奉仕などをして建設します。
すべてがボランティアの精神によっています。
地域の状況に配慮し、できるだけ多くの人達の参加のもとで造ります。
地域の繋がりを高めるため、コミュニケーションを図り、造る過程を大切にしています。
20年余りの小屋造りから思うこと
共創により無私の精神による支え合いの精神の大切さ。感謝のココロさらに。
四国の人々のやさしさ・あたたかさ。
お大師さんの教えが今の生活に活かされていることを実感し、空海への畏敬の念がより強くなってきています。
今後の課題
最近建築する土地の情報が少なくなり造るペースが遅くなっているので、新たな活動を検討し、後31棟の小屋造りに取り組む必要性を感じています。
造るだけでなく最近は、経年変化にともなうメンテナンスも私達で行いつつありますが、さらなる強化の必要性があります。
社会貢献
ヘンロ小屋造りは今の社会に失われつつある、関係性・共感性・想像性・物語性・霊性を僅かなりでも体現されている例では?
これらを再構築することによってこころ豊かな社会になるのではと考え、今後も地道にプロジェクトを推進したいと思います。
主宰 歌 一洋