長坂 真護
2017年6月「世界最大級の電子機器の墓場」と呼ばれるガーナのスラム街“アグボグブロシー”を訪れ、先進国が捨てた電子機器を燃やすことで生計を立てる人々と出会い、“我々先進国の豊かな生活は、このスラム街の人々の犠牲のもとに成り立っているという真実”を先進国に伝えるため、電子ゴミを使ったアートを作り、その利益をガーナに返還する活動を続けている。これまでに1,000個以上のガスマスクをガーナに届け、2018年にはスラム街初の学校『MAGO ART AND STUDY』を設立。2019年8月アグボグブロシー5回目の訪問で53日間滞在し、彼らの新しい希望と生活のために、スラム街初の文化施設『MAGO E-Waste Museum』を設立した。この軌跡をエミー賞授賞監督カーン・コンウィザーが追い、ドキュメンタリー映画“Still A Black Star ”を制作。2021年7月、現地スタッフより街が消滅したとの連絡を受け、焼き場の失業者に新しい仕事としてのオリーブ農業を学ぶため小豆島を訪れた。今後は現地へリサイクル工場だけではなく、空気を汚さない農業などを導入すべく奮闘中。
美術家の長坂真護です。
この度は、第57回社会貢献者表彰という名誉ある賞を賜り、誠にありがとうございました。またコロナ禍の中にも関わらず、万全の感染症対策で式典を実施いただき、安倍会長はじめ社会貢献支援財団の皆様には、心より感謝申し上げます。
私は2017年から約 5 年間、ガーナのスラム街アグボグブロシーで活動してきました。そこは「世界最大級の電子機器の墓場」と呼ばれ、世界中から電子機器廃棄物が集められる場所として知られています。3万人が住むと言われるその地域では、住民が電子機器廃棄物の野焼きを行い、溶け残った廃棄物の中から、銅線やアルミなど金属を取り出し、わずか日当500円と言う低賃金で生計を立てています。初めて現地に訪問した際に、この現実を知った私は、資本主義の「大量生産・大量消費・大量廃棄」の社会構造の中で、最後にしわ寄せが来るのがガーナのような後進国であることに大きな違和感を覚えました。
私はこれまで、アートの売上によって得られた資金を使い、彼らへのガスマスクの提供や、学校、ミュージアム建設などを行ってきました。そしてこれからは、彼らの環境・貧困問題を抜本的に解決するために、リサイクル事業・農業・EV事業といった事業活動を通じた課題解決の実現を進めて参ります。例えば、リサイクル事業では、2021年12月にガーナ現地でリサイクル工場を設立し、2022年 7月には破砕機が導入され、E-Wasteの処理が開始されました。今後は、生産された原料からプロダクトを開発し、ガーナや日本などで販売することで、彼らに還元していく想定です。現在、農業も含めガーナのスラム街から10名を雇用させていただいていますが、2025年には100名、そして2030年には10,000人を雇用、ガーナのスラム撲滅を目指します。
今回、受賞された皆さまと共に、我々もより良い社会の実現に向け、ガーナの環境・貧困問題の解決に全力で邁進していきたいと思います。
本当にありがとうございました。