認定NPO法人 チャイルド・リソース・センター
虐待行為のあった親子の関係を修復し、再構築されるよう虐待の再発、連鎖を防ぐ活動を行っている。児童相談所(児相)で児童福祉司をしていた宮口智恵さんは「児相は虐待された子どもの保護を最優先し、1組1組の親子にじっくり関わる時間がない。虐待する親への支援は容易ではない、どうすれば虐待の再発を防ぎ、親が子どもにとって安心な存在となるのか」と模索する日々を在職中に続けていた。そんな時に、カナダで虐待の再発防止に成果を挙げている親子プログラムがあると聞いて視察に行き、そのプログラムを日本でも取り入れることにした。2006年にカナダのプログラムを参考にして親子プログラムを開発。翌年にNPO法人チャイルド・リソース・センター(CRC)を設立し、児相の委託を受けて親子関係再構築プログラム「CRC親子プログラムふぁり」を15年にわたり実施している。対象となる親子は児相との協議によって決定するが、約8割の子どもが施設入所中または里親に委託中。これまでに400名以上の親子に実施された。プログラム終了後も親子を見守り、虐待のない社会を目指して活動を続けている。
この度は、社会貢献者表彰を受賞させていただき、心より感謝申し上げます。
認定NPO法人チャイルド・リソース・センター(CRC)は、児童相談所等からの依頼を受け、児童虐待の再発防止を目指した親子関係の再構築支援の活動を行う団体です。
自身が多くの助けを得ながら育児中だった17年前、「児童相談所で出会った親御さんたちは、大切に育てられた経験がなく、子育てを支えてくれる人もいない。困難を抱える親子を支える場所になりたい」という思いが生まれ、それがこの活動を始める動機になりました。
その後、カナダのNPOに見学に行き、公的機関とは異なる立場で虐待をした親と子どもへの親子関係再構築支援のための方法を学び「CRC親子プログラムふぁり(以下プログラム)」を開発しました。プログラムで大切にしていることは、不安な気持ちで参加する親御さんに、自分の存在そのものに関心を向けられ、あたたかく迎えられる経験をしてもらうことです。そのような経験があって初めて、子どもに関心を向けられるようになるからです
プログラムでは、1組の親・子それぞれに1人ずつファシリテーターと呼ばれる専門のスタッフ(以下FA)がつき、2週間に1回の頻度で約8か月間にわたり行います。これまでに500人近くの親子と出会ってきました。1回のプログラムは、親子がともに過ごすためのアクティビティを準備し、親子での“共有体験”を持ってもらう時間(親子交流時間)、親がFAとともに、親子交流時間での自分達の関わりについての気づきを共有したり、テーマについて考える“対話”を行う時間(親時間)の2つを組み合わせて実施されます。FAは、これらの経験を通し、親が子どもを支えられるように伴走します。その中で、こんな親になりたい、こんな子どもに育てたいという親の内なる願いにも出会います。親御さんの過酷な生い立ちやよく親子で生き抜いてこられたと思うお話を聞くこともよくあります。
団体名にもある“リソース(resource)”は直訳すれば“資源”となりますが、私たちは “宝もの”と捉えています。ここまで生き抜いてきた体験、好きなこと、誰かとのつながり…どんな人にも必ずその人のリソースがあるはずです。それを知ることは、その人が人生を生き抜くための大きな力・可能性になると信じています。
これからも“子どもにとっての安心基地”を親と支援者の方と共に作り、一組でも多くの親子のリソースを一緒に発掘していきたいと願っています。
代表理事 宮口 智恵